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「眠れる森の美女」で徹底的な悪として登場したマレフィセントに深い心情描写を加えた映画「マレフィセント」。
アンジェリーナ・ジョリー演じる心優しいマレフィセントに驚いた人も多かったはず。
王子様からのキスで目覚めるという大方の予想を覆して目覚めさせなかった監督の意図とは?
悪の側面からしか描かれてこなかったマレフィセントに二面性を持たせた理由、そして悪は滅ぼすべきなのか解説していきます。
マレフィセントの二面性
幼い頃のマレフィセントは純真無垢な妖精で、ムーア国の誰からも慕われていました。
まだこの頃は妖精としての一面しか持ち合わせていませんでした。
ところが16歳を迎える頃、彼女は愛する者からの裏切りを受けて復讐を誓う魔女の一面を与えられるのです。
私達人間も幼い頃は経験値が少なく、幼少期の彼女のように純粋な一面しか見せません。
しかし色々な環境や人間関係に対面しながら、複雑な内面の変化を経て大人になります。
マレフィセントだけが二面性を持っているわけではないのです。
私達にも純粋な面と邪悪な面が多かれ少なかれ備わっていて、彼女とそう大きく違わないでしょう。
だからこの映画「マレフィセント」に感動したり、自分と重ね合わせて感情移入することができるのです。
冷たく閉ざしたその心は妖精だった時代のマレフィセントを押し込め、オーロラ姫に呪いをかける邪悪な存在にまでに貶めました。
しかし彼女は邪悪さに支配された魔女ではなく、後悔や慈しむ心を持つ妖精としての自分も維持しています。
二面性をもたらしたステファンという悪
一時はマレフィセントと深い愛で結ばれたステファンも、己の野望のためにマレフィセントを裏切ります。
薬を飲まされて寝ている彼女の翼を切り取り、持ち去ったのです。
命は奪いませんでしたが、翼は彼女自身といっても過言ではないもの。
マレフィセントが絶望するシーンからも分かる通り、彼女はもはや本来の彼女ではなくなってしまったのです。
心を殺されたマレフィセント
翼を切り取るという行為は性暴力を振るうことを意味しています。
薬で眠らせたマレフィセントに、欲望のままに性暴力を振るったステファン。
妖精は完全なる善の存在です。純真無垢な妖精マレフィセントは生まれて一度も悪と関わりを持ったことがありませんでした。
白はどんな色にも染まります。
ステファンによって黒に染められた彼女はかつて愛し合った男性からの裏切りだけでなく、性暴力の被害者にもされたのです。
マレフィセントの二面性はステファンによってもたらされたといえるでしょう。
ステファンの欲深さ
ステファンは切り取ったマレフィセントの翼をなぜ処分せずに保管していたのでしょうか。
彼女を殺した証拠としての役割はすでに果たしたのですから、翼は用済みなはずです。