別居中の妻の妃英理に似ている美波子が犯人ではない事を信じる小五郎。
その無実である証拠を集めようとしますが、それが逆に後々皮肉な結果となってしまいます。
ウェルカムパーティーでの推理ミスが逆に、小五郎が真実に辿り着くまでの見事な伏線となっているのです。
小五郎らしからぬ観察力
本作では小五郎が時折キョロキョロしたり、事件の矛盾点に気付きそうになったりといつもの小五郎らしからぬ動きを見せています。
この観察力が後々の事件解決への糸口になってくるのですが、これは「小五郎が何だかいつもの動きと違うな」と思わせるための導線なのです。
変装した美波子とすれ違う時、胸を庇う様な仕草をした事から男性ではなく女性である、という部分に気付いた小五郎!
このいつもの小五郎らしからぬ冴えわたった観察力が、後の名推理を展開する先々の導線となっているのです。
小五郎が推理を当てられた理由
「水平線上の陰謀」はコナンが推理ミスをし、小五郎が見事に事件を解決に導く、言わば小五郎の「神回」のような作品です。
何故小五郎はこの難事件を解決できたのでしょうか?その謎に迫っていきます。
妻・妃英理への想い
真犯人の美波子は小五郎の別居中の妻・英理にそっくりという事もあり、映画の序盤から美波子に拒否反応を示す小五郎。
いつもは女性を見るとデレデレになる小五郎ですが、美波子には全くと言っていいほどそういう素振りを見せません。
美波子が英理にそっくりでなかったらこの事件は小五郎が解決するという展開には至っていないでしょう。
なぜなら美波子が英理にそっくりという事で、小五郎が美波子を意識する大きなきっかけとなったからです。
そこに、普段は喧嘩をしながらも大切に想い合う“夫婦”である小五郎と英理の見えない絆というものが垣間見えています。
犯人であってほしくない!
アンタがアイツに似てたから、犯人がアンタじゃなきゃいいと思って無実の証拠を集めようとしたからこうなっちまったんだよ
引用:名探偵コナン 水平線上の陰謀/配給会社:東宝
全てはこのセリフに詰まっています。
小五郎は、美波子を犯人として疑っていましたが、実は心の底から美波子が犯人ではあってほしくないという願いを誰よりも持っていました。
小五郎は、英理の事を苦手のようにしながらも心の底では誰よりも大切に想っている、本当に愛しているのです。
沈み行く船の中で、美波子を追い詰める小五郎。
英理とそっくりな美波子となら、船と一緒に沈んでもいいという小五郎の覚悟のようなものもこのシーンから垣間見えます。
大切な家族で、心から愛した人であるからこそ、そっくりな美波子には犯人であってほしくない。
これは極限状態にある小五郎の究極の愛情表現で、英理への二度目のプロポーズなのです。
そして、少年探偵団や阿笠博士が言っていた「相手を思いやる気持ち」という部分につながってくるのでした。