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『裏切りのサーカス』は2011年に公開された合作の映画です。
イギリス・フランス・ドイツが制作に関わり、その難解さで二度観ることが推進されているほど……。
イギリスとソ連の冷戦を描いた本作はジョン・ル・カレの小説が元になっていますが、スパイ描写がリアル過ぎるのには理由がありました。
一度観ただけでは分からない仕草の意味や、エンディングの謎めいた演出をじっくり考察していきます。
エンディングの謎めた演出の意味
『裏切りのサーカス』は全編を通して難関です。
ストーリーを見逃してしまうと、ラストシーンは意味不明のものになってしまうでしょう。
ジム・プリドーの復讐?
ジム・プリドーはビル・ヘイドンが自分を「殺すな」と嘆願していたことを知る由もありません。
ジム・プリドーにとってビル・ヘイドンは、自分を敵国に売った憎き相手なのです。
個人的な憎しみとサーカスを裏切った者への制裁、モグラとしての彼の行動に復讐を果たした、と観るのが一般的でしょう。
しかし、この映画を複数回観ていくとこのラストの復讐劇には複雑な心情が隠されていると気がつくはずです。
ジム・プリドーの愛がビル・ヘイドンを殺した
二人はかつて恋人同士でした。
このことは劇中で明確に語られてはいませんが、コニー・サックスは下記のように語っています。
「ジム・プリドーとビル・ヘイドンはいつも一心同体だった」
引用:裏切りのサーカス/配給; 引用:裏切りのサーカス/配給;ギャガ
本作はゲイの要素をふんだんに使用しており、そこから察するとビル・ヘイドンとジム・プリドーは恋人同士であったと考察できます。
だからこそビル・ヘイドンは、ジム・プリドーを殺すなと嘆願していたのです。
しかし、ブタペストでは新人の諜報部員が焦って銃を撃ってしまった……。
この新人諜報部員の行動が、二人に亀裂を生じさせたのでしょう。
自分が信じていた愛は偽物だった、という思いがジム・プリドーの中に渦巻いたのかもしれません。
ビル・ヘイドンは気がついていた
ビル・ヘイドンはジム・プリドーが自分にライフルを向けていると気がついた様子でした。
しかし、ここでも劇中にセリフはありません。
ビル・ヘイドンの表情や観客自身の解釈で、彼の気持ちを推察するしかないのです。
この時自分が殺されるのは仕方がない、ジム・プリドーに申し訳ないことをした、と謝罪していると解釈が出来ます。
しかし、スパイとしてやったことだから仕方がない、私情と一緒にするなと訴えているようにも観えるのです。
ビル・ヘイドンがどんな思いで殺されたのか、各々が思いを巡らすことで作品の深みが増すのではないでしょうか。
涙のような演出
ラストシーンでビル・ヘイドンは血の涙を流しているように描かれています。
一方撃ったジム・プリドーの目にも、よく観ると涙が見えるのです。
ふたりの涙が、愛と裏切りを巧みに表現しているのではないでしょうか。
スパイ描写がリアル過ぎる理由
本作のスパイ描写は奇抜な演出がある訳ではなく、どちらかというと静かに描かれています。
しかしその描かれ方がリアル過ぎると話題を呼んでいるのです。
原作者はイギリスの情報機関出身者
本作の原作者ジョン・ル・カレは元々イギリスの諜報機関で働いていた人物です。
1956年にM15の下級職員となった。1960年にM16への転職願いを出す。
引用:裏切りのサーカス/配給; 引用:裏切りのサーカス/配給;ギャガ
秘密情報の収集や情報の工作など、本作に取り扱われているシーンがリアルなのは真実を知る人物が原作を書いているからです。