ハリウッド映画のように派手なアクションや特殊なアイテムが出てこないのは、リアルさを追求した為でしょう。
ちなみに原作者であるジョン・ル・カレは、「ゲイの司書」として劇中のパーティーシーンにカメオ出演しています。
実在するKGB組織
本作は冷戦を背景に描かれていますが、使用されているソ連KGBなどは実在した組織です。
また本作に描かれている「モグラ」は二重スパイという設定ですが、冷戦時代はこのような二重スパイが多数潜り込んでいたということです。
実際に存在していた組織をリアルに登場させている点も、本作にリアリズムを注ぎ込んでいるといえるでしょう。
至近距離の弾丸が外れる
冒頭部分でハンガリーの新人諜報部員が、至近距離で誤射をし母親の頭部を撃ってしまいます。
このような演出も、評価されるスパイ描写ではないでしょうか。
ヒーロー映画のように的確な射撃ではなく、至近距離でも弾は当たりにくいという実際の射撃率が描かれているのもリアルです。
劇中に隠された仕草の意味
本作はセリフ数が少なく、ストーリーは登場人物の仕草から読み取っていくことになります。
ドアの木片を外す
劇中にスマイリーがドアの木片を外す仕草が登場します。
「尾行されていないか?」
引用:裏切りのサーカス/配給; 引用:裏切りのサーカス/配給;ギャガ
冒頭部分のコントロールのセリフを聞くと、スマイリーは敵から尾行され侵入されているのを警戒しているかのように受けとれます。
しかしこれはミスリードともいえる構成で、ドアの木片は妻アンが帰宅しているか否かを確かめる為に仕込んだものです。
スマイリーはアンを愛しすぎており、彼女が浮気をしても受け入れてしまうほどの男なのでしょう。
冷静で完璧なスマイリ―の弱点であり、人間味を感じさせる所でもあります。
テーブルの上のナイフ
リッキー・ターがスマイリーの自宅に身を隠していた時、テーブルの上にナイフが置いてあります。
これはリッキー・ターの意思表示の仕草です。
わざと目に付くとことに自分の武器であるナイフを置くことで、相手に敵意のないことを示しています。
細かい演出ですが、ひとつひとつの動作を紐解いていくと作品に深みが増してきますね。
スマイリーのメガネ
冒頭部分でスマイリーは自分のメガネを黒メガネに変えています。
このことで観客は、過去の回想シーンか現在のシーンかを見分けることが出来るようになっています。
過去と現在が入り混じる作品なだけに、ストーリーを読み解くうえでスマイリーのメガネは大きなヒントとなるでしょう。
ビル・ヘイドンの笑顔
サーカスのパーティーシーンで、スマイリーはビル・ヘイドンと笑顔を交わしていました。
この二人は仲が良かったのか、と思わせますが実はこの笑顔には大きな意味が隠されています。
劇中では分かりにくいですが、この時スマイリーは妻アンの視線を辿って振り返っているのです。
その先にいたのがビル・ヘイドンというわけで、何も知らずに彼に笑顔で手をふったスマイリーは少々可哀そうな男に描かれています。
「ハラショ」の意味
劇中で、トビー・エスタへイスにビル・ヘイドンは下記のように答えるシーンがあります。
「ハラショ」
引用:裏切りのサーカス/配給; 引用:裏切りのサーカス/配給;ギャガ
この言葉はハンガリー語でありがとうの意味になります。
直前にトビー・エスタへイスはハンガリー語で電話をしており、それに対して「今ハンガリー語で話していたよね(お前、怪しいよ)」といっているのです。
これはモグラであるビル・ヘイドンが、自分の正体を隠すための言動であり観客をミスリードさせる仕草でもあります。
難解?モグラが巧みに隠されている
本作は難解な映画として話題になっています。
なぜ難解な構成にしているのでしょうか。
意図的に削っている
『裏切りのサーカス』は映画DVD、BDの特典映像を観ると納得出来るようです。
いいかえればこれらを観ないですべて理解するのは、かなり無理があるのではないでしょうか。