物語は過剰なミラクルは避け、わずかでも「可能性」があることを静かに表現し淡々とエンディングに進んでいきます。
止まない雨はない「レインマン」真の意味
たたみかける質問にレイモンドが混乱するのを見たチャーリーがマーストン博士の質問を制止し、兄弟だけになった時のやりとりが感動的です。
C・H・A・R・L・I・Eは「Main man」
チャーリーが病院ではじめてレイモンドにあった日のシーンを思い出してください。レイモンドの担当を長年していた介護士が言った言葉です。
自分はレイモンドに一番近い人物で「親友」って呼んでくれけれど、一度も体には触れさせてはくれない。
引用:「レインマン」/配給会社:ユナイテッド・アーティスツ
このことと比較して、二人のきりになった時のチャーリーとレイモンドの会話と行動で真に心の交流ができたことがわかります。
チャーリー:「旅をしている間に心が通じたと思ったことは本当なんだ。俺は兄さんを持てて良かった。」
レイモンド:「チャーリーは“Main man(親友)”C・H・A・R・L・I・EはMain man」
引用:「レインマン」/配給会社:ユナイテッド・アーティスツ
そして、次の瞬間にレイモンドは自らからチャーリーの額におでこをつけました。
チャーリーはレイモンドの額にキスをしますが、レイモンドはパニックになりません。つまり、本当に心が通じ兄弟に戻れたということです。
兄弟の絆が結ばれた感動の瞬間
レイモンドにとって雨の日には外出をしないルールで、それはチャーリーと部屋で過ごす時間でもありました。
レイモンドにとってチャーリーと過ごしたこの旅は雨の日と同じです。また、チャーリーにとってもレインマンと過ごす日々だったといえます。
旅の終わりが雨が止んだ日とするならば、レインマンは晴れて「Main man(親友)」になった日でもあるのです。
エンドロールのスナップ写真
劇中でレイモンドが小さなカメラで無作為に写真を撮っていたシーンがありました。
その写真と思われるものがエンドロールで流れます。レイモンドに見えた病院以外の世界であり、チャーリーとの旅の軌跡ということです。
「ビュイック・ロードマスター」は父の代わり
レイモンドがいた病院はイリノイ州でそこからロサンゼルスまでの道を「ルート66」といいます。
そのルート66を父親の愛車であるビュイック・ロードマスターで旅をする設定について考えてみましょう。
この設定は父が離れ離れだった兄弟を引き合わせ、二人の息子を乗せて二人の時間の溝を埋めていくようなものだったように感じます。
ビュイック・ロードマスターで母なる道を走る
「ルート66」はアメリカの母なる道と呼ばれています。二人を導くように父のビュイックはその道を走りました。
写真の「10分の9」は兄弟関係が修復できた目安で、最後に出てきた「Dynaflow」の商標は父親としての役目を果たしたかのように伝わります。
終わりは再会までのカウントダウン
チャーリーはレイモンドとの別れ際に「2週間後に会いに行くよ」と約束をして、それまでの時間を計算させました。
ルーティーンで動いているレイモンドはその時間をカウントダウンしながら、チャーリーの訪問を病院で待っていることでしょう。