並みの指導者であればそのカッタッパの機転、助け舟をこれ幸いと利用するはずです。

そしてカッタッパに形だけでも処罰を与え、この問題を何とか解決にもっていこうと考えるものでしょう。

デーヴァセーナを説得してバラーラデーヴァの妻にするか、もしくはバラーラデーヴァにデーヴァセーナをあきらめさせるか。

そうした解決策をとることもできたはずです(デーヴァセーナが受け入れるかどうかはまた別の問題)。

諸刃の刃

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もしシヴァガミがカッタッパの助け舟にこれ幸いと乗る人物であったら。

もしかしたらアマレンドラ・バーフバリが国を継ぎ、偉大なマヒシュマティ王国はさらに繁栄を極めていたのかもしれません。

しかしそういった権力を利用して道理を曲げてしまうような真似をしないのがシヴァガミです。

そんな清廉な彼女だったからこそ国民は信頼し、国王不在の軍事大国を守り続けることができたとも考えられます。

物事がうまくいかない時はすべてが裏目に出るもの。

これをきっかけにシヴァガミの、そして王国の運命に暗雲が垂れ込めることになるのです。

デーヴァセーナの誇りか、それとも民の幸せか

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デーヴァセーナの誇り、それを守る行動が暴君誕生の元凶だったともいえます。

デーヴァセーナの言い分が正しいとしても、これは王族の人間としてはいささか軽率過ぎという印象を拭えません。

それはアマレンドラ・バーフバリにしても同様です。

王族の義務とは

ユリイカ 2018年6月号 特集=『バーフバリ』の世界 ―インド映画と神話の豊穣

王族の人間は民のことを考える義務があります。それがあって初めて王族の特権も許されます。

デーヴァセーナはクンタラ王国の王女として王国の誇りを守ることと同時にクンタラ王国の立場を考える必要がありました。

大国であるマヒシュマティ王国を統べる国母シヴァガミの不興を買ったらクンタラ王国はどういうことになるのか。

クンタラ王国の平和な暮らしは守れるのか。

”王族の姫は自分の結婚相手を選べる”といっても、その結婚が国に及ぼす影響を考慮しないわけにはいかないのです。

その分別があってこその”結婚の自由”です。それが王族たるものの心得でもあります。

アマレンドラ・バーフバリにしてもそうです。自分には王位は必要ないと思っていたのかもしれません。

国母が国王に指定し、国民も慕う、誰が見ても徳高くその器であるアマレンドラ・バーフバリが国王になること。

それによって強大な軍事王国マヒシュマティの平和は守られると誰もが信じていたはずです。

アマレンドラ・バーフバリは母の悲哀や立場を思いやったでしょうか。

彼は「王位かデーヴァセーナか」と迫られたときにデーヴァセーナを迷いなく選びました。

そしてデーヴァセーナは自分の意志を主張しシヴァガミを敵に回し、勝ち誇ったように宮殿を後にします。

残念ながらそこには国民を思いやる王族としての姿は存在しませんでした。

自分達の正義が悲劇を生む

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デーヴァセーナの行動が結果的にはクンタラ王国の滅亡を引き起こしました。

それだけではなくアマレンドラ・バーフバリとシヴァガミの死、そして暴君バラーラデーヴァの圧政を呼ぶことになるのです。

シヴァガミとデーヴァセーナの確執は規模の大きな嫁姑問題のように描かれています。

しかし真に暴君の君臨を許したのは嫁姑の確執そのものではありません

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