家族から孤立している彼にとって、タオ達は心の家族になっていたのです。
いいかえれば、タオ達はウォルトの財産になったともいえます。
ウォルトは芝生に入られるのを極端に嫌っている所からも、自分の財産を大切にする典型的なアメリカ人です。
大切な財産であるスーやタオを傷つけられたことは、彼が復讐を決断する理由として余りあるものだったのでしょう。
病によって余命がわずかだった
ウォルトは自分の病気について知り、それほど長くは生きられないと悟っています。
息子とも上手く接することが出来ない彼が、孫のようなタオに何かを残したいと思ったのかもしれません。
命のリミットを感じたことで、唯一彼が死ぬ前に出来ることを見出したのです。
命の価値を知っていた
ウォルトは自分の死をもってタオ達を救済しますが、人の命の価値を知っているからこそできた決断です。
病気によって孤独に死んでいくよりも、最後まで自分の命を活かす方法を選んだのではないでしょうか。
決断を下した彼の真意は、復讐ではなくタオ達を守るという男気に溢れたものだったのです。
ウォルトの心を揺さぶったもの
ウォルトが、タオ達に心を寄せるきっかけとなったものは何だったのでしょう。
そのきっかけには元軍人という過去が関係しているようです。
タオの心優しい行動
近所の人が、買い物の荷物を落としてしまった時、唯一彼女を助けに行ったのがタオでした。
タオの顔は見えない状況でしたが、ウォルトは彼が隣人のタオであることを気付いたはずです。
今どきの若者にない、優しさを持つタオに「いい奴じゃないか」と感じたでしょう。
この一瞬のシーンにセリフはありませんが、ちょっとした表情で心情を表現してしまうクリント・イーストウッドはさすがです。
スーのセリフがきっかけ
ベトナム戦争でアメリカに味方、
共産主義勢力の報復を逃れてアメリカに来たの
引用:グラン・トリノ/配給会社:ワーナー・ブラザース
上記はスーを助けた時のセリフですが、モン族の彼女達は、アメリカの味方だったのです。
ウォルトは朝鮮戦争に出兵していますが、スー達はその後のベトナム戦争でアメリカ側に付いたということになります。
史実上でも下記のように記されています。
アメリカ合衆国は、ラオスのモン族を数十万雇った。
アメリカがベトナム戦争に敗れると、モン族は見捨てられ行き場を失った。
引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/モン族
ウォルトは朝鮮戦争で敵だったアジア人に、良い印象を持っていなかったのでしょう。
そして、彼にとって黄色人種は全て同じ人種に見えていたのです。
しかし、スーと出会いアメリアの味方になったアジア人もいると知り心をほぐしていったのではないでしょうか。
計算高いラストシーンに秘められたもの
本作のラストは、切ないほどに見事なものでした。
ウォルトがいい男であり、愛される理由は計算高いラストシーンにあるのです。
復讐は殺す事ではない
死を恐れぬウォルトなら、ギャング達を皆殺しにすることも出来たのかもしれません。
しかし彼はあえて丸腰で殺されることを選んでいます。