亜紀の死を知らないまま大人になってしまった律子。
冒頭で律子が泣いたのは、亜紀の死を初めて知ったショックと、その恋人が朔太郎であった事でショックを受けたからです。
自分だけが幸せになっていいのか、そんな想いで律子は最後のテープを靴箱に届けに行く事に決めたといえます。
それは朔太郎と律子が亜紀の死とちゃんと向き合い、前に進むために、必然的な出来事だったのです。
亜紀が朔太郎を導いた
朔太郎がテープを探しに行った理由は、亜紀の導きだったともとれます。
なかなか自分の死を受け入れられない朔太郎に、“もう自由になっていいんだよ”と亜紀が朔太郎に諭したかったのです。
律子が最後のテープをたまたま見つけたのも、朔太郎と律子が魅かれあったのも、偶然ではなく必然の事だったといえます。
“幸せになってほしい”という亜紀の最後の優しさであり、今を生きる朔太郎と律子へのメッセージだったのです。
そこが“あなたは今のあなたを生きて”という亜紀の最後のテープの言葉につながってくるのです。
世界の中心とは
ラストで、朔太郎と律子は亜紀の願いであったウルルの地で亜紀の遺灰を撒きます。
これは、二人の心の解放であり、亜紀の事をずっと忘れないという朔太郎と律子の心の誓いの描写であるのです。
そして、亜紀の分も二人で幸せになろうという決意の表れともいえます。
朔太郎のいう世界の中心とは、愛する人物がいる空間の事なのではないでしょうか。
人は、出会いと別れの中で日々生きていきます。
愛し愛される人がいるという事は本当に奇跡のような事です。
朔太郎がテープを探しに行ったのは、“世界の中心”というものがどういうものなのか、知る為の旅だったといえます。
そして叶えられなかった、亜紀との約束を果たす為の旅だったのです。
亜紀との過去が与えた律子への影響
朔太郎の高校時代の恋人が亜紀だった事を知り、ひとりショックを受ける律子。
最後のテープを渡せなかった事で、責任を感じています。
亜紀との過去が与えた律子への影響とはどういうものだったのでしょうか?
人一倍責任感の強い女性
律子は文字通り人一倍責任感の強い女性です。
真っ直ぐ芯が通っているという表現がぴったりの女性です。
亜紀の生きた証は確かに律子の中にも存在していました。
その証拠に古いカセットテープから流れてくる声が亜紀の声だとすぐにわかったのが事実です。