一般的にも人間関係の修復には第三者が大いに活躍することがあります。オラフのように可愛い存在であればなおさらです。
夫婦間の亀裂でも純粋無垢な幼い子どもが埋めてくれることがあります。小さくても大きな役割を持つオラフは姉妹にとって大切な存在なのです。
エルサとアナの愛とは?
アナは、エルサの魔法によってどんどん髪の毛が白く凍り、同時に体も凍り付いていきます。
これは裏切りによって「愛」を失ったためにかかってしまった魔法です。劇中でアナの魔法が解けた時に、オラフが下記のように叫んでいます。
「真実の愛が凍った心臓を溶かした!」
引用:アナと雪の女王/配給会社:ウォルト・ディズニー・ピクチャーズ
凍った心臓とは凍った心と読み取れます。アナは愛を見失ったことで心が凍っていたのです。ここで原題『Frozen』が意味を持ちます。
姉妹の間は常に凍り付いている状態でした。その元には特にエルサに見られたようコミュニケーション自体を拒否する態度があります。
それが氷解することで姉妹の愛が輝きを放ちます。その愛が何だったのかは先のミルスタイン氏がいうよう鑑賞者の解釈に委ねられるでしょう。
ただ、2人の愛はどんなに凍り付いても修復不可能な人間関係などないということを何よりも伝えるものだったといえるでしょう。
愛のメッセージ
アナ雪では姉妹愛の他にもさまざまな愛のメッセージがあります。3つ解説しましょう。
多様な愛が認められる現代社会との符合
アナ雪ではクライマックスにどんでん返しがあります。アナの氷を溶かしたのがクリストフではなく姉妹の愛だったということです。
ディズニー映画がこのように男女間のロマンスを引っくり返すことは、世界中に大きな影響を与えます。
今、世界の潮流はLGBTに象徴されるよう多様な愛が認められる方向に向かっています。
エルサとアナが示した姉妹愛はロマンス以外にもこの世の中を華やかにする愛があるということをセンセーショナルに示しました。
それで勇気付けられた人は世界中に数多くいることでしょう。
愛がなければどんな才能や個性も台無しになる
氷の魔法を持て余すエルサはとても象徴的な存在です。彼女は天賦の才能に恵まれ、それを存分に発揮する力をも持っています。
しかしコントロールすることが出来ないため、それが自分の大切な人や故郷にまで危害を加えてしますのです。
それが愛をこころに宿すことで劇的に変わります。愛こそがエルサの魔法を本当に大切な力に変えたのです。
これは多くのことを訴えます。学問やスポーツでも人を思いやる愛という土台がなければ、せっかくの才能が花開きません。
凍りついた心のままでは、その力は人を傷つける物にもなります。本作は愛が人間性の根幹にあることを伝える映画と見ることもできるでしょう。
最もシンプルな愛のメッセージ
アナと雪の女王には、姉妹の愛・男女の愛・ドワーフたちの愛など様々な愛の形が登場しています。
しかし愛はふとしたことで誤解を生みやすいものです。
劇中で姉妹がお互いを誤解してしまったように、表面上の行動が「真の愛」を隠してしまうこともあるのです。
自分の中にある「愛する気持ち」に素直になることが幸せになる近道なのではないでしょうか。
そして「愛される」ことを怖がらずに受け止めていけたらなお良いでしょう。
『アナと雪の女王』は最高の主題歌に後押しされたラブストーリーの名作になりました。
世界中から愛された真の理由は、作り手が大切にした愛の形に観客がさまざまな形で共鳴したからなのではないでしょうか。