無表情ではあるけれど人間らしい優しい一面が分かるように描かれていました。
ここのシーンはお腹を空かせたガブリエルが食器を押しながら勢いよく餌を食べていますね。
これはバセットハウンドを飼っている監督ならではの飼い犬への愛情や観察力によるものなのでしょう。
安心して自分でいられる場所でけっして他では見せない人間らしく疲れたように見える表情のバトー。
そしてその膝の上で安心して眠るガブリエル。
体はサイボーグでぬくもりはなくてもお互いの魂のあたたかさで安心できるのです。
体は機械で出来ていても優しく感じる心を持っている。ここが人形との大きな違いなのでしょう。
イノセンスに出てきた人形たち
ずっと人形に興味があっていつか映画にしたかった監督。
この映画に出てくる人形たちは不気味さがありちょっと夢に出てきそうでしたが…
- ハンスベルメール(球体関節人形)… ガイノイド(愛玩アンドロイド)
この人形はベルメールからインスピレーションを得たもので関節部が球体になっているところに魅力を感じていたのでしょうか。
そしてこの作品にはベルメールの写真集も登場していました。
- ラ・スぺコラ(人体標本)… 映画冒頭に出てくる赤い着物の少女型アンドロイド
イタリアのフィレンツェの動物解剖博物館にロケハンで訪れています。
ここに展示してある蝋人形は内臓がむき出しになっているのです。
この映画ではガイノイドが自壊した場面がそのイメージに近いと思われます。
他には、択捉経済特区の町ではアジアの人形劇や京劇・キムの屋敷ではかわいいからくり人形なども登場していました。
バトーの素子への気遣い
ロクス・ソルス社のアンドロイドの製造元に潜入したとき素子はバドーを助けるためにアンドロイドに降臨しました。
そこでバトーと共に戦いましたがその姿は裸の人形のまま。
体は別の義体なのにバトーは女性として扱って自分の上着をかけてあげるという素子への気遣いが見られました。
しかしそれだけではなく他の意図もあったのです。
それは無数に出てくるたくさんのアンドロイドたちと素子を区別するために着せるという効果もあったのですね。
事件解決後ガブリエルを迎えにいくバトー
事件を解決して無事に家に帰ってきたトグサとバトー。
ガブリエルはかけてきてバトーに駆け寄りバトーが肩にかつぎます。
トグサは愛する娘を抱っこする、そして娘は人形を抱っこする。
それぞれに愛する対象が違うけれど大事なものがあると感じること、これがゴーストなのです。
最後に娘が抱っこしていた人形の目がクローズアップされる。
青い目。
バトーはその眼の中に、ネットの海に再び帰って行った素子を見ていたのではないでしょうか。
この映画は一度だけ観ても理解するのが難しいため何度も観ることにより色々な発見ができるでしょう。