ですがこのフロアは現実に不満があるなら、在り方を変えてしまえばいいというメッセージでもあります。
マルコヴィッチを見守り続けたレスター社長
次代の器であるマルコヴィッチを見守り続けたレスター社長は、おそらくマルコヴィッチの血縁関係者です。
自分の子孫に乗り移ることで生きてきたと考えられます。それ故に子供の頃から監視してきたのでしょう。
穴自体はマルコヴィッチに今通じているだけであって、もともとは器に通じる穴として出現したと思われます。
なぜ穴には15分しか居られない?
15分というのはアメリカの芸術家アンディー・ウォーホルが発言した名言が元になっています。
未来には、誰でも15分間は世界的な有名人になれるだろう
引用:Wikipedia
15分だけのインスタントな有名人になれるのが、マルコヴィッチの穴なのでしょう。
マルコヴィッチの穴は15分しかいられず、時間が切れると高速道路の側道に落とされます。
ロケ地であるリンカーン・センターからニュージャージーの高速につながってるのですが、絶妙な距離です。
調べてみると、車でちょうど15分の距離になります。
44歳に選ばれしものが入る
マーティン船長(レスター社長)は44歳の誕生日までにマルコヴィッチに入ることで乗り換えができるとロッテに告白します。
44歳がもっとも成熟しており、それを過ぎると子供の精神に捕らわれてしまうのです。
ジョン・マルコヴィッチは公開時にはすでに44歳を過ぎているため、空想のマルコヴィッチが必要になります。
なので作中に出てくる「ジョン・ホレイショ・マルコヴィッチ」は44歳になり、乗っ取られているのです。
結末は何を示すのか
マルコヴィッチはレスター社長たちに乗っ取られ、クレイグは時間に間に合わず精神を囚われてしまうのです。
このエンディングが指し示すことについて解説していきましょう。
エミリーは次代の器
「お腹の子はマルコヴィッチの次の器」と言っていたように、代々マルコヴィッチ家の子供は器にされていたようです。
90年前に穴の存在を知ったと言っているので、2代分くらいはマーティン船長が乗り移っていそうです。
エミリーが44歳になった時、レスター(マルコヴィッチ)の友人であるチャーリー・シーンと乗り移るのでしょう。
クレイグは精神の牢獄に囚われる
時間を過ぎてマルコヴィッチに入ろうとしたクレイグは、エミリーの精神に飛ばされます。
子供の精神力は強く、クレイグが干渉できる余地はありませんでした。
エミリーが見ているものを、目を逸らすこともできず見続けます。
一番残酷に思えるクレイグですが、実際に一番残酷なのは乗っ取られたマルコヴィッチでしょう。
エンディングが伝えているメッセージ
ラストにエミリーがプールで泳ぐ水中撮影のシーンは、アルバム「ネヴァーマインド」のオマージュに見えます。
「ネヴァーマインド」はニルヴァーナというバンドが世界中でブレイクするきっかけになったアルバムです。
輪廻から開放されるニルヴァーナ(涅槃)を伝え、最後に見るものを開放しようという監督のメッセージに思えます。
まとめ
人々が持つ「自分の不満」を解決するためのヒントを与えるかのような不思議な作品になっています。
どうやっても他の人にはなれないので、自分を生きていくしかないんだよという強いメッセージを感じるのです。
自分を変えるよりは、世界を変えるマーティン船長の妻のような生き方がいいのではないでしょうか。