でも、やはりジャックの忠告のとおりフロストルは俗物でした。
フロストルの頭を置物で殴って逃げ、九死に一生を得たわけです。
そしてディックの自分への愛を確信し彼へのすまなさを思い、自分の進む道を見出したとみることが出来ます。
「ダンス」
本作では「ダンス」には直喩的意味合いを持たせています。
まずは「クオリティ」誌の暗室でのジョーとディックのダンス「Funny Face」。
ディックがジョーに自分の個性的な美しさに気がついてと歌い踊ります。
次にパリの共感主義者の集まるカフェ。
ジョーが主体となって踊る前衛的ダンスには、ジョーがまだ「共感主義」から抜けていない意味を持たせています。
そして教会の裏で撮影中に踊る「He Loves and She Loves」。ここで二人は相思相愛であることを確認します。
ラストのダンスはメインテーマ「S’ Wonderful」に乗せ、幸せを掴んだ二人を祝福しています。
このように、主役二人での「ダンス」シーンは曲の内容で二人の愛情の変化を表現させる役を担っているのです。
パリの観光映画としての魅力
パリに到着した日。浮かれた気分で雑誌編集長のマギー(ケイ・トンプソン)とジョー、それにディックの3人はパリを堪能します。
「Bonjour Paris」に乗せて、オペラ座、ノートルダム寺院、ルーブル博物館、サクレクール寺院、セーヌ川、シャンゼリゼなどを歩きます。
そして3人はエッフェル塔で合流する仕掛け。
さらに、ジョーのモデルとしての撮影シーンでは、カルーゼル凱旋門、ルーブル美術館(サモトラケのニケ前)、オペラ座内の階段が登場。
本作が製作された1957年頃、アメリカ人にとって(世界にとっても)パリは憧れの「花の都」でした。
本作は当時の欧州文化への憧れ(ファッションも当然含まれます)が示されたパリの紹介映画としても観る人の目を楽しませてくれます。
色彩の魔術と音楽
この映画は、パナビジョン、テクニカラーで撮影されています。
テクニカラーの美しさ
特に発色の良いテクニカラーの魅力が冒頭のタイトルバックから洒落たデザインと共にたっぷりと味わうことが出来ます。
もちろん、オードリーのジバンシーの衣装、彼女の肌色、そしてパリの名所の数々の美しい色彩は私たちの目を十分に楽しませてくれます。
本作のオスカーノミネート一覧を見ると、いかに美術、衣装部門が評価されていたかが分かると思います。
アカデミー賞
ノミネート
アカデミー脚本賞:レナード・ガーシュ
アカデミー撮影賞 :レイ・ジューン
アカデミー美術賞:ハル・ペリーラ、ジョージ・W・デーヴィス、サム・カマー、レイ・モイヤー
アカデミー衣装デザイン賞:イディス・ヘッド、ユベール・ド・ジバンシィ引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/パリの恋人
音楽を含め本作の多彩な魅力を楽しもう
オードリー・ヘプバーンの魅力を堪能し、フレッド・アステアのダンスを楽しみ、パリの美しい景色を恋の喜びと共に味わうこの作品。
キャメラワークも素晴らしいです。
そして忘れてはならないのが、アイラ&ジョージ・ガーシュウィンのペンによる数々の名曲たち。
もちろん、主役二人の恋愛の行方の深いところを考えながら本作を鑑賞すると、思いがけない楽しみが見つかるかも知れません。