山盛りに盛られた食事を、会話もなく口に運んでいくだけで何が楽しいのでしょうか。
また2人が、ランチにハンバーガーを食べているシーンで、釣り用に買ってくるように頼まれた「ミミズ」が映ります。
これは、ハンバーガーの肉がミミズ肉のような出所がわからないもので作られているというメタファーでしょう。
スラム肉のスキャンダルも彷彿とします。
そんなものを美味しそうに呑気に食べているアメリカ人に対するブラックヒューモアでしょう。
風景
雪に包まれた田舎町で、娯楽といえばテレビと酒場や娼婦たちとの戯れ。
夫婦の会話もさしてなく、食事を摂り、ベッドに入るシーンで幸せだと呟くマージに、見ている側は頭の中がハテナでいっぱいになります。
淀んだ目でぼんやりテレビを見続けるハゲた夫と、当選した3セント切手の使い道についてラブリーに語る2人は、文字通り2人だけの世界にいます。
しかも殺伐とした事件の最中に、この夫婦は何がそんなに幸せなのでしょうか。
マージが吹雪の中で、ポジテイブに言います。
人生はもっと価値があるものよ。
こんないい日なのに。
引用:ファーゴ/配給会社:20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
井の中の蛙、もしくはご都合主義のアメリカ人の幸せに対し、たっぷり皮肉を込めて語られているシーンでしょう。
けれど8ヶ月の身重の体で、よく警官の仕事を続けられるなと感心します。ノームは仕事をしていないから仕方のないことなのでしょうか。
夫を引き止めたい一心でマージは妊娠をしたのかと、テレビのワンシーンが彷彿とさせます。
身代金事件が実話だとしたら
もしこの身代金目当ての誘拐および殺人事件が、実話だとしたら、雪に埋められた92万ドルが、まだどこかに埋もれたままになっているのことになります。
埋めたカールが死んでしまったのですから、誰も知る由もありません。
ただ冷静に考えてみれば、知る由もないのに、どうして埋められたことがわかるのでしょうか?
どこかに消えてしまった92万ドルを求めて、人々の噂や思惑が広がっていきます。
フィクションを実話にした理由
実際どこかに92万ドルが埋もれているかもしれないというと、人は我先に探しはじめて騒ぎになる可能性も出てきます。
そうなったとき、映画が映画で終わらず、フィクションが現実に繋がってくることになります。
話題作りとも考えられますが、実際に社会が騒動になったときに、その騒動で何かを問いかけたいのかももしれません。
もしくは笑い飛ばしたいのでしょうか。