信頼があり、バランスのとれた関係だったからこそ、月浦での2年間を一緒に過ごすことができたわけです。

りえさんの心の中で、「ここへ連れてきてくれてありがとう」という気持ちが、「あなたを愛したい」という感情へと変化していったのでしょう。

これはきっと、老夫婦の愛の形に触れたことが大きいのではないでしょうか。

ずっとパンをわけあたえてきたつもりが、実は自分たちもパンをわけあたえられていた、ということですね。

「陽子さん」とは何者なのか?

しあわせのパン

本作は正直なところ、「おとぎ話」に近い世界観で成り立っています。

彼らの暮らしぶりは現実ではハードすぎてなかなかに難しいのではないでしょうか…。

常連さん以外にお客さんは登場しないことからも、遠方からパンを買いにくる人は少ないのでしょう。。

パンを卸すようなシーンもありましたが、これだけでは生活が成り立ちません。

しかし、それこそが監督の意図であり、この世界観を象徴した登場人物こそが「陽子さん」なのです。

「耳だけはよい」

引用元:しあわせのパン/配給会社:アスミック・エース

たびたびこう発言していた彼女の言動はもはや予知能力に近いのです。

その浮世離れした服装も含め、こんな人は現実には存在しないだろうというデフォルメされたキャラクターになっています。

本作では、陽子さんをはじめ現実では無理のあるキャラクターや設定をあえて盛り込むことで、「自然な不自然さ」を作り出そうとしていたのです。

そのような世界をわざわざ作り出した理由が、後述の「生活感の排除」へとつながります。

まとめ

([み]2-1)しあわせのパン (ポプラ文庫)

記事の冒頭で触れた「かもめ食堂」もそうなのですが、このジャンルの作品にはとにかく生活感がありません。

まるで箱庭の中をのぞいているかのような、「こうやって暮らせたらいいな」という虚構の生活が描かれます。

そういう意味で本作は、ヒューマンドラマでありながら、ある意味でファンタジーとしての側面も持っているといえます。

生活感を排除し、まっさらになったピュアな世界で監督が一番描きたかったテーマは、「再生」と「パートナーシップ」なのでしょう。

マーニを訪れる人はみなどこかで生きづらさを抱えていました。

また、恋人や家族、伴侶との関係にそれぞれ悩みを抱えている人々です。

それが「パンのわけあい」によって晴れていきましたね。

そしてそれは訪れる人だけではなく、マーニを営むりえさん自身に関しても当てはまることだったのです。

「くん/さん」という呼び方ひとつひとつにもこんな意味があることを改めて考えてストーリーを振り返ってみると、作品に深みがグッと増しますね。

この考察を読んでもう一度「しあわせのパン」を鑑賞してみてはいかがでしょうか。

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