しかし実際は薬草を煎じたり占いをする程度でした。
魔女たちは知識が豊富であったために、理解できない人たちから魔法を使っていると誤解されていただけです。
彼女達の賢さが仇となり、怖れの対象にされて魔女狩りが起こったと考えられています。
社会の中で恐怖や不安が蔓延した時、誰かを「悪」に仕立てて排除する方法がとられることがありました。
魔女は秩序を保つために社会から捨てられた存在といえます。
魔女と島民の共通点
魔女は秩序を保つために社会に捨てられ、階段島の人々も自分の秩序を保つために自分に捨てられました。
ですから魔女は階段島に捨てられた人々と同じ境遇です。
魔女の正体として明かされた人物は堀でしたが、彼女にとっても階段島は居心地が良いのだと思います。
だから島民を力で支配しようとせず、快適な暮らしを提供しているのです。
堀からの手紙の意図
堀には「捨てられた人」と「魔女」の二つの顔がありました。
それを踏まえて、警鐘を鳴らす手紙を七草に渡した意図を考察していきたいと思います。
目障りな真辺
堀の手紙は七草を心配して書いたように見えますが、島の平和も込められていたようにみえます。
階段島に来た当初から真辺は現実の世界へ戻ると宣言していました。彼女の発言は島の平和を乱す原因なのは間違いありません。
階段島を管理している魔女にとっては目障りだったはずです。だから魔女である堀は七草に手紙を書いたと考えられます。
七草への想い
手紙は島を維持するための他に、もう1つ解釈を加えることができます。
堀には七草を現実に返したくないという気持ちもあったのではないでしょうか。
言葉数少ない堀にとって、七草は唯一楽しく会話できる相手だったと思います。
そんな彼が真辺のために懸命に謎を解こうとしている。これは魔女としてではなく堀として七草を引き止めているように見受けられます。
捨てられた人とは?
私達は子どもから大人になるために多くのものを捨ててきたといえます。
大人になるにつれて、自分の本音を押し殺して生きることを強いられるようになるのです。
周りと足並みを揃えて、波風立てずに送る日々。それは子供のように無邪気に振る舞うことは許されない環境です。
大人になるために犠牲にしたものは数知れません。大人の階段を一歩一歩上がる度、何かを捨てていきます。
それが現実の自分から捨てられた階段島の人々であり、大人になるために犠牲にしたものだったのです。