ロシア大統領のこの姿を見て、ドゥロフはクーデターを起こすことを決意します。
弱いリーダーはロシアの脅威
ロシアの軍事基地にザカリン大統領を誘い込み、クーデターを実行したドゥロフは自身の信条を語ります。
「私はこのロシアの国益と領土を守ってみせる。内外のいかなる脅威からも。その脅威に弱いリーダーも含まれます。」
引用:ハンターキラー/配給:ライオンズゲート
国益と領土を守るという大義名分のもと、ドゥロフは大統領を敵とみなしたのです。
アメリカに対して戦争を仕掛けなければ、ドゥロフの野望は達成されません。
そのために大統領を利用しようとしましたが、結局大統領は煮え切りませんでした。
だからこそ、軍事権を自身が獲得するしかなかったのです。
米ロ開戦へ向けた秘策はロシア憲法と潜水艦
まずクーデターを起こしたところで、軍事権は大統領にあるのでドゥロフの命令を聞くとは限りません。
さらに、アメリカと戦争したとしても軍事力においてどうアメリカを上回ろうと考えたのでしょうか。
ドゥロフには「ロシア憲法」と「潜水艦」という秘策がありました。
大統領が病気の際には…
大統領に軍事権があるロシア憲法ですが、いつでも大統領が元気だとは限りません。
ロシア憲法には、大統領がもし病気になれば軍事権は国防相が担う、と規定されています。
ドゥロフが利用したのはその規定でした。大統領を監禁し、自分が軍を指揮しようとしたのです。
結局ロシア兵にクーデターのことは伝わっておらず(一部の人は知っている)、ドゥロフは軍を思いのままに動かします。
また大統領をSealに奪われましたが、大統領もろとも殺してしまえば国内には「アメリカがやった」と報道できます。
そうなれば国内のアメリカに対する戦意は高まる上、大統領不在のため軍事権はドゥロフに集中するのです。
戦術の変化:陸から海。海から空。空から深海。
戦争において陸・海・空のどこを制圧すれば、有利に事を運べるかは歴史の中で移り変わってきました。
最初は陸、それから戦艦などを使った海戦、第二次世界大戦からは制海権よりも制空権の有用性が立証されてきています。
それから時代は進み、現代では制海権や制空権よりもいかに「相手に気付かれないよう近づくか」が戦術のテーマになりました。
そこで潜水艦の登場です。潜水艦があれば、相手のレーダーに映らず領土に近づける上、近年はそれに核兵器も搭載できます。
深海権の争いとも言うべき現代の戦争において、原子力潜水艦さえあればそれなりにアメリカとも戦えるのです。
ドゥロフはそこまで考えて、米ロ開戦を計画していたのでした。
ロシア駆逐艦ヤヴチェンコが攻撃をしなかった理由は師弟愛
ロシア駆逐艦ヤヴチェンコはアメリカ原子力潜水艦アーカンソーを攻撃していました。
ついにアーカンソーを追い詰め、グラス艦長も諦めかけたとき、なぜかヤヴチェンコは攻撃をやめます。
そこには、ドゥロフによって破壊されたロシア原子力潜水艦コーニクの艦長アンドロポフと駆逐艦ロシア兵との師弟愛がありました。
「アンドロポフ艦長に忠実」な駆逐艦ロシア兵
アーカンソーを襲ったヤヴチェンコのロシア兵は、駆逐艦長を除くすべての兵士がアンドロポフ艦長が育てた兵士でした。
「間違いない。駆逐艦のヤヴチェンコだ。乗員は私(アンドロポフ)が鍛えた。失敗はしない。」
引用:ハンターキラー/配給:ライオンズゲート
アンドロポフ艦長は駆逐艦の乗員全員を育てていました。
だからこそ、グラス艦長もその話の真偽、ロシア兵のアンドロポフ艦長に対する忠実度を何度も確認し、説得するよう頼むのです。
一人ひとりの名前を呼ぶので、ロシア兵は心を突き動かされる
駆逐艦への説得は、短く、それでいて愛情に満ちたものでした。ロシア兵の一人ひとりの名前を呼び、攻撃しないように伝えるだけ。
名前を呼ばれた兵士たちは、アンドロポフ艦長の地声に、艦長から受けた愛情や信頼を思い出したのです。
それが攻撃を中止する行動につながりました。ヤヴチェンコ艦長の命令よりも、アンドロポフ艦長への愛情や信頼が勝ったのです。