表向きは死亡とされていますが、果たしてその真相はいかなるものでしょうか?
大友は本当に死んだのか?
石原と加藤とは対照的に、大友は刑務所で刺殺されるという結末を迎え、片岡も彼の死を報告しています。
しかし、実は劇中では大友が殺されたとは明示されていません。
確かに大友は木村に脇腹を刺されてはいるものの、引きのカットで上手く誤魔化されています。
片岡の報告も口だけで、実際に大友の死を肉眼で確かめたシーンは映像として示されていません。
故に大友が死んだか否かは定かではなく、生き延びている可能性もあるのです。
「自殺」を選ばなかった理由
大友に関しては、死んだか否かよりも何故刑務所に自首という結末にしたのか?に注目したいところです。
少なくとも「アウトレイジ」以前の北野映画であれば、ここで潔く自殺という選択肢も考えられたでしょう。
しかし、ここでそれをしなかったのは本作があくまでも組織の論理で理不尽に殺されるゲームだからです。
それは誰に対しても同等であり、自殺という選択肢はこの場合「自由意志」になってしまいます。
そのように考えると、大友は部下達を理不尽に奪われた挙句自首によって合法的に社会から抹殺された、となるのではないでしょうか。
ある意味本作で一番屈辱的な殺され方です。
水野のその後は「牛裂き」のパロディ
さて、アウトレイジではもう一人、大友のナンバー2であった水野の死も外せません。
彼は演じる椎名桔平の演技も相俟って物凄く格好よく見えますが、劇中随一悲惨な最期を迎えた人物でもあります。
その最期は首を車で引きずられた反動による擬似的な絞首刑によって殺される、という凄まじい衝撃でした。
もっとも、この処刑自体は珍しいわけでもなく、江戸時代初期に見られた「牛裂き」に酷似したものです。
そのヤクザ映画風パロディとして表現されているのが水野の死の面白さであります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
本作はとことんまで「暴力」に振り切っている為に表面上の派手さが目立ちますが、全体のトーンは重たく静かです。
また、新旧入り交じった様々なヤクザの抗争に「世代交代」「死と再生」といった普遍性のあるテーマも盛り込まれています。
北野映画の「闇」を凝縮した本作は人を選ぶものの、非常に色濃い作品として映画史に残り続けるでしょう。