出典元:https://www.amazon.co.jp/dp/B00I7LE1ZE/?tag=cinema-notes-22
この作品は、ハンター・キャンベル・アダムスという実在する方の人生を、監督のトム・シャドヤック氏が映画化したものです。
本記事ではパッチ・アダムス(以下パッチ)が、指が8本に見えた理由、病院へ何度も潜入した理由、そして成績がトップクラスに良かった理由を考察していきます。
8本の指の真意とは?
パッチがアーサーと出会い、指が何本見えるか質問される冒頭のシーンは、かなり印象的です。
このやり取りがパッチの考え方をどのように変え、その後どのように影響を与えたのか考察していきます。
実在する4本の指
見たままの答えを言ったはずがアーサーに間違いだと指摘され、パッチは納得がいきませんでした。
「これはこうだから…。」、と1+1=2という要領で答えを導くのは、誰しも普通のことです。
私たちが、目の前の事象をさも当たり前だと決めつけてしまうことを象徴的に表した、物語の核心的な考え方に迫る冒頭であったことは間違いありません。
目に見えない更なる4本の指
パッチは再度アーサーと問答を行い、指の数を言い当てると次のように発言します。
「人に見えないものを見ろ。」
「恐れとか怠惰で、人が見ようとしないものを。」
「新しい世界が見えてくる。」引用:パッチ・アダムス/配給会社: ユニバーサル・ピクチャーズ
アーサーがかざした指の数は、確かに4本しかありませんでした。
しかし、指の向こう側を見ろという助言からパッチは8本の指を見出しました。
目に見えることだけが全てではなく求められた答えを見えないものから見出したパッチは、この時物事の本質を見る重要性に気づいたのではないでしょうか。
パッチを導いた8本の指のなぞなぞ
指のなぞなぞが解けた以降、パッチの行動は表面的ではなく物事の奥を深く見る行動に変化し、パッチの人生の重要なモットーとなります。
その後、精神病棟で職員たちの悩みの種となっていたルディを変えたことは、8本の指を見出して変化したパッチの考え方を大きく表しています。
この場面では衛生的な問題(物事の表面)が原因だと考える職員と、問題が精神的な不安(物事の奥)にあると考えるパッチとの比較を通し、映画の核心的テーマが描かれたといえるでしょう。
8本の指が私たちに投げかけること
映画冒頭のこの謎かけは、主人公パッチを導く指針となるだけでなく、私たち視聴者に投げかけたメッセージなのではないでしょうか。
日常的に見慣れ当然としていることを実は全く理解できていなかったり、苦手だからと遠ざけていることは誰しもあります。
謎かけが教えてくれたのは、さも当然として目に映るものは、別の角度から見れば全く新鮮で異なるものに見えるというヒントなのかもしれません。
懲りずに病院に潜入した真の意味
無許可で侵入し、様々なトラブルを犯してもパッチは足繁く大学の付属病院に通っていました。
パッチはなぜ「病院に潜入すること」にこだわり続けたのか、またそこで何を探し求めていたのでしょうか。
試行錯誤して発見する
トルーマンとの条件反射実験を行い、実験結果からパッチは確信を得ました。
「人間が相手である以上人の中に飛び込む必要がある。」
引用:パッチ・アダムス/配給会社: ユニバーサル・ピクチャーズ
パッチが実験の後に発言した言葉です。
“ハロー効果”という理論は知っていたものの、実験によって、実際の反応は個人や条件によって異なるという見解を得たからこそ、この言葉は生まれたのでしょう。
そしてこの経験によって、パッチは医科大学での”机の上でのお勉強”ではなく、”病院での臨床”こそに価値があると確信し病院への潜入を試みたのでしょう。
ただ学部長の講演を聞いて勉強を優先する他の医学部生と、医師としての本質を更なる実験によって得たパッチを比較する一幕だったと考えられます。