出典元:https://www.amazon.co.jp/dp/B00A9PU0O2/?tag=cinema-notes-22
平安時代末期の日本は貴族や豪族が華やかで雅な暮らしが徐々に影をみせてくる時代でした。
戦災や天災で多数の貧困民が飢えや疫病に苦しみ、町のいたるところには息絶えた屍が横たわる地獄絵図そのものだったのです。
「アシュラ」はそんな乱世の時代を舞台にした、ジョージ秋山の漫画が原作のアニメ映画です。
「眼を、そむけるな。」のキャッチフレーズで2012年9月公開し、人肉食などの過激な描写から非難も多かった問題作でもあります。
原作:ジョージ秋山
監督:さとうけいいち
声優:野沢雅子、北大路欣也、林原めぐみ
受賞:第16回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門優秀賞
引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/アシュラ_(漫画)
この映画を観る時のポイントとして、時代背景や仏教の基本的なことを知っているとより深堀して観ることができます。
キャラクターの役割を仏教の教えにあてはめながら観ることで、作品のメッセージが伝わってきます。
主人公の名前となった「阿修羅」とは
国土が乱れる時代の日本に中国から仏教が渡り、阿修羅(アシュラ)は仏教の中の仏法の守護者という位置で伝来します。
阿修羅は古代インド神話の神の一人でしたが、最高神に逆らったことで魔族扱いされるようになりました。
日本でも仏教上で一般的には帝釈天と敵対する悪鬼神として知られています。
仏教の逸話で元は天界の「正義を司る神」でしたが、天界を追われ戦いに執着するあまり許す心を失くしたと言われています。
アシュラのおいたち
アシュラは飢餓や疫病で苦しむ時代に一人の貧しい女性から生まれ、その母から飢えのあまりに焼かれ喰われそうになりながらも生き延びます。
どのように生きながらえたかはアニメでは描かれていませんが、子供の姿をした「獣(ケダモノ)」のように成長しました。
獣のように俊敏に動き野生動物や時には「人」をも殺生しその肉を喰らっていました。人の「言葉」はもちろん「心」も育っていないのです。
「ケダモノ」と化したアシュラ
アシュラは空腹になると村人を襲いその人肉を食べて生きていました。どうしてそのようになってしまったのでしょう?
一度は我が子を食べようとした母親がその後、飢えのため心を失くし人としての一線を越え人肉を食べながらアシュラを育てたと考えられます。
アシュラにとって人間は生きていくために捕食する対象としてしか見えていないのです。
法師との出会い
空腹になったアシュラは念仏を唱えながら歩く法師を捕食しようとし、逆に法師にやられてしまうかたちで出会いました。
「人間にして、人に非ず。戦わずにいられない哀れな「ケダモノ」
怒り、嘆き、傷つき、殺す。おまえは苦しみの炎を背負っている…阿修羅…これからは今日からそう名乗るがよい。」
引用:「アシュラ」/配給:東映
法師は気絶したアシュラをねぐらに連れて帰り、食べ物を与え「アシュラ」と名前を付け人としての心を諭す人物です。
しかし、法師は焦土化した乱世が生んだ哀れなアシュラとの出会いで、「生きる」という命の営みを観念ではなく実感として会得します。