なのでお金になるならないはあくまでも結果論でしかないのではないでしょうか。
炎上商法
そんな灰島のやり口に見えるのは今ネットや週刊誌などが得意としている「炎上商法」ではないでしょうか。
火のない所に煙は立たないといわれますが、現代では火のない所にわざわざ煙を持ってきて火事を起こそうとする輩がいます。
灰島のやろうとしたことは突き詰めるとそのレベルでしかないということであり、実にやっていることが低俗で浅薄です。
しかし、逆にいえば彼のようなやり口がもう既にまかり通るような時代が来たことも意味していたのではないでしょうか。
室井を襲った真犯人
最終的にこの炎上商法じみたやり方で起こった冤罪は全く大したことのない男女関係の縺れでした。
室井を襲った真犯人の正体は桜井杏子であり、しかもその理由も極めて自分勝手なものだったのです。
この落ちが何とも肩透かしで批判も多かったのですが、逆にいえば本作らしい構造だといえるかもしれません。
というのも、何か大きな事件や冤罪といったものの殆どはこうして小さな事件に尾ひれがついて盛られたものだからです。
引っかき回すだけ引っかき回して、この程度の落ちにしてしまうのはある意味刑事ドラマそのものへの揶揄とも取れます。
広島へ異動の真意
そのような蓋を開けてみたらたいしたことのない事件だったことから、広島へ異動となる真意もよく分かりません。
室井を広島へ異動させた新城は「あの人は警察に必要だ」とつぶやきましたが、本心でそう呟いたのでしょうか?
確かに辞表まで提出し、ここまで冤罪にしてしまった以上彼を無罪放免扱いにも昇進扱いにも出来ないでしょう。
しかし、だからといってクビにしてしまっては自身の器の小ささが世間に明るみに出てしまう。
それだけは避けたいから、せめて治安が悪いことで有名な広島へ異動にすることで体裁を保とうとしたのでしょう。
彼を広島へ異動させればどんな難事件でも解決してくれる凄腕刑事だから見送ったとすることが出来るからです。
そもそも権力闘争の当事者であった彼が粋な計らいで広島へ異動させたなどとは到底考えられません。
国家権力への風刺・皮肉
いかがでしたでしょうか?
本作は当時「踊る」シリーズのスピンオフとして余りにも違い過ぎることから批判も多かった作品です。
しかし、こう見ていくと実は現代日本の警察の闇、国家権力の愚かしさを皮肉たっぷりに描いたのではないでしょうか。
表現の是非は兎も角、シリーズが敢えて踏み込まなかった禁忌へ踏み込む敢闘精神は評価されるべきでしょう。