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百田尚樹作『永遠のゼロ』を映画化した本作は、神風特攻隊をはじめとして戦争について深く考えさせられる作品です。
健太郎の血のつながりのある祖父で主人公の宮部久蔵は、臆病者と呼ばれたほど「生き抜くこと」に執着した人物。
しかしその宮部がなぜ最後には、特攻隊に志願したのか。さらには、米空母に特攻する直前宮部が笑っているようにも見えます。
怒っている、笑っている、いろいろな見方がされている表情には一体何が隠されていたのでしょうか。
そしてわざと大石賢一郎と航空機の交換し、航空機の中に入れた手紙の真意とは何なのか。
戦争についてより考えさせられる作品なだけに、宮部久蔵という人物を掘り下げることで多くの学びがある作品です。
宮部の表情をどう捉えるか
米空母に特攻を仕掛ける直前、宮部の表情はうっすら笑顔になっているようにも見えました。
しかし人によっては「勝ち誇っている」「怒っている」「泣いている」ようにも見える、と評価が分かれています。
そのさまざまな捉え方ができる表情は、監督やキャスト、製作側の考えが現れたシーンだったそうです。
脚本に記された宮部の表情
本作の脚本でも宮部の表情は語られています。
脚本の内容を簡単に説明すると、宮部は澄んだ川のようにすべてを悟っており、微笑とも取れるような表情をしているそうです。
この表情を思い浮かべると、一つの感情だけでなく、死を直前にいろいろな感情が入り交じったように感じられます。
それは戦争に対する怒り、家族の元へ帰れない悔しさ、苦しみから解放される喜び、見る人によってさまざまです。
このシーンに対していろいろな人の反応があるのは、いろいろな感情が入り交じった表情だからと考えられます。
監督山崎貴の思い
監督の山崎貴は、このシーンにこの映画のすべてを注ぎ込んでいると話します。
というのも、原作の『永遠のゼロ』にはこのようなシーンはなく、映画でしか表現されていないものだからです。
家族思いで、その家族の元に生きて戻ることを信念としていた宮部が、徐々に変わり、最後には特攻を実行する。
山崎貴は怒りや悲しみ、喜びや笑いなど、宮部の壮絶な人生の終わりを最後の表情1つで表そうと試みています。
つまりこのシーンには宮部の人生すべてが詰まっており、いろいろな解釈がされて当然で、どの解釈も正解だと言えるのです。
未来を見た宮部
原作とは違うシーンが、映画にもう一つあります。
映画では、健太郎がすべてを理解した現代に話が戻ります。その際に、健太郎の前に突然零戦と祖父宮部久蔵が現れました。
そのときに宮部は、はっきり孫に対して敬礼をします。
このことから予想されるのは、特攻を仕掛けた宮部が死の直前に未来を見ていた、ということです。
そこで見た未来は平和な世の中で、何より孫が元気そうに生きています。それが見えて、安心して笑ったのです。
原作とは違う、映画やそれを製作側の独特な宮部の人生への捉え方だと考えられます。
宮部と部下たち
生き残っているうちに、宮部は昇格していきます。その飛行能力の高さを買われ、戦闘機の操縦を自分の部隊に教えるようになりました。
宮部の部下に対する接し方や、指導を見ていると宮部が特攻に志願した理由が見えてきます。
部下を擁護
パイロットになるため飛行訓練をしていた宮部の部下の伊藤が、事故で亡くなってしまいました。