女装した衣装の準備といい、このあたりがコメディの愉快なところ。ツッコミどころ満載。
そしてクルーザー持ちのお金持ちの男(シェル石油の御曹司と名乗り)に変装してシュガーに近づくのです。
終始女装を通すジェリーに対して、男に戻ってシュガーをモノにしようというその意気込みが窺われるジョーの行動といえます。
ジェリーとオズグッド
一方のジェリーは、大富豪オズグッドに一目惚れされてしまいます。
人の良いジェリーは、デートに付き合ったりして、ついにはオズグッドから求婚され、高価なブレスレットを貰ってしまいました。
同性とはいえ人の愛や親切心を裏切れない真面目な性格のジェリー。
とにかく人の良いジェリーはジョーとの行動とは裏腹にどんどんドツボにハマっていくのですが、そこも本作の面白さ、見どころの一つでしょう。
ギャングがいなくなってから
ジョーとジェリーを追ってきたギャングが二人が演奏しているホテルで会合に参加するためにやってきました。
しかしギャング同士の抗争で追っ手が殺され、ジョーとジェリーは逃げる必要がなくなります。
ジョーはシュガーに嘘をついていたことを告白。シュガーはジョーの愛を受け入れることに決めました。お金持ちじゃないのに。
一方、オズグッドに求婚されているジェリーは、彼に自分といると幸せになれないと女装のまま説得するのですが、聞き入れてくれません。
愛は盲目といいますから。ついにジェリーは女装のかつらを外し、自分は男なんだ、と決定打を繰り出します。
しかしオズグッドは、アメリカ映画の中でも有名なセリフとして記憶されている名セリフを口にします。
”Well, nobody’s perfect”
<完全な人間なんていないさ>
引用:お熱いのがお好き/配給:ユナイテッド・アーティスツ
はやばやと男女の恋愛として決着を付けたジョーとシュガー。
それに対して人の良いジェリーはさっさと「私は男だ」と言い出せません。
自分を好いてくれた人を傷つけたくない、そんなジェリーの心情と純情なオズグッドのトンチンカンさが際立つコミカルなシークエンス。
これがオズグッドが口にする最後のオチのセリフに収斂していくわけです。
単なるにドタバタでは終わらせず人間味をちゃんと残すワイルダー流の仕上げといえます。
シュガーがジョーの愛を受け入れた理由
この映画をまとめる言葉です。嘘をついてシュガーに近づいたジョー、一方お金に目がくらんで御曹司に誘われたシュガー。
お互いに愛に対する動機は不純でした。しかしそこに生まれた二人の間の愛には偽りはないと気がつくジョーとシュガーだったのです。
シュガーもジョーも、胸に手を当てて考えてみれば、お金が目的で愛しているわけではないという事に気がつくのに時間はかかりませんでした。
本当の愛に気がついた、と読み取れるところです。
かたや、姿形にとらわれるような恋愛を求めない大富豪の愛のあり方も、最後のセリフに象徴されるように、純粋なものでした。
おバカ丸出しの喜劇ではあっても、最後に締めるところは締めるビリー・ワイルダー流のコメディ。さすがです。
ジョーの魅力の真意とは
考えてみると、この映画のストーリーを終始リードしているのはジョーです。
ギャングに追われる立場になり、女声の声色を使ってガールズバンドに加入を試みたのもジョー。
シュガーを見るとひと目でこの女性を手に入れるとさっさと決めるのもジョーで、相方のジェリーは終始ボケ担当・受け身といった形です。
女装しても、ニューハーフ風のなかなか美女に化けるジョーに対し、出来の悪いオカマといった風情のジェリー。