ダイアンが自殺に至った経緯は自身がしたかった大事な話をクリスにデートという形で不意にされたことでした。
しかし、これだけならばダイアンは自殺など選びません。それまでにイヴリンの教育で精神が限界を迎えていたのです。
逆にいいますと、ダイアンは「暗黒面に陥るかも知れないメアリーの将来」を体現していたともいえます。
ギリギリの所でイヴリンの教育方針から逃れられたメアリーですが、下手するとダイアンのようになったかもしれません。
彼女の死が本作全体に非常に暗い影を落していたのです。
イヴリンの改心
イヴリンは最終的に自身の教育の過ちに気付き、親権を手放します。
果たしてそこにはどのような意味が込められていたのでしょうか?
ただ「愛する」こと
イヴリンが親権より論文を取った理由の一つは「ただ愛すること」のシンプルさに気付いたからです。
イヴリンがやってきた英才教育自体が必ずしも間違ってるとはいえません。
事実フランクはイヴリンから英才教育を受けさせる有用性を学んでいるのですから。
しかし、それはあくまでもその子供が自らの意思を尊重して無理のない形で行わないといけません。
フランクの愛情たっぷりの育て方の尊さに気付いたからこそ、彼女は親権をフランクに返したのです。
約束と責任
そしてもう一つが遺言を残したダイアンの約束と責任をしっかり果たすことでした。
彼女が残した方程式の論文はダイアン自身が数学者として生き抜いた証であり、一つの集大成です。
歪んだ教育方針で自殺に追い込んだのであれば、尚更残された側はダイアンの約束と責任を果たさねばなりません。
ダイアンが生前に書き残した論文はそれだけ重たく、色々な思いが込められたものでした。
才能と教育
いかがでしたでしょうか?
本作を見ていると、昨今の問題である親子関係を中心に「才能と教育」について色々と考えさせられます。
ダイアンの死、そしてメアリーへの英才教育は才能が必ずしも子供を豊かにするとは限らないという見本市です。
しかし、その一方でやはり教育は財政力や環境で大きく左右される所があり、イヴリンもただの悪役に終わっていません。
フランクにしろイヴリンにしろ、メアリーを愛しているからこそ生じたエゴが暴走しただけなのです。
大事なのは子供自身の意思を尊重した上で、出来る限りの愛情を注ぐこと。
一番難しいけど、同時に一番大切なメッセージを深く教え込んでくれる本作はまごうことなき名作でありましょう。