人間という生き物はどんなに意志が強くても努力をしても環境には勝てない生き物です。
ましてやミアのようにずっと見下され続ける人生を送っていればそれはいわずもがなでしょう。
祭り上げられる恐怖
そして何よりミアが一番戸惑っていたのは高貴な身分である自分を掌返して賞賛してくる周囲の身勝手さです。
特に散々ミアの失敗をからかっていた癖にミアの親友と言い出したチアリーダーはその典型でしょう。
更にそのような祭り上げられる存在になると、必然的にマスコミも執拗に彼女を追いかけるようになります。
また、それは同時に世間やマスコミが作り上げる王女としての自分と本当の自分との乖離にも繋がるのです。
本質的に抱えるものがこれだけ複雑だからこそミアの葛藤にも説得力が生まれています。
最後のスピーチ
そうした様々な困難や葛藤を経て、彼女は遂に王女としての宿命を受け入れます。
その決意ともいえる最後のスピーチは駄目だった頃のミアを完全に払拭する素晴らしいものでした。
なぜこのような立派なスピーチが出来たのかを考察していきましょう。
「勇気」の象徴である父の手紙
舞踏会を途中で抜け出したミアがスピーチを決意した決定打は父が残した次の手紙でした。
勇気とは恐れぬことではない。恐れを克服しようと決心することなのだ。
引用:プリティ・プリンセス/配給会社:ブエナビスタ
そう、彼女に足りなかった最大の要素は父親からの愛情、そして「勇気」です。
ミアの自己肯定感が低かったことも結局自分のメンタルに自分で蓋をしていたからでした。
彼女は恐らくどこかで自分のメンタルをマイナスからプラスに転じたかったのでしょう。
しかし、その為に必要な自分を後押ししてくれる強い言葉が欲しかったのです。
父からの手紙は正にそんな彼女のメンタルをプラスに転じてくれた「勇気」そのものでした。
真の王女になる
ずぶ濡れになりながらも、舞踏会に戻ってきたミアは毅然とした態度で手紙を読み上げます。
もうこの瞬間それまでの弱かった頃のミアの姿はなく完全に真の王女となっていました。
このスピーチは文字通り「宣言」であり、物語上の紆余曲折を乗り越えたカタルシスがそこに重ねられています。
この一点にミアが歩んできた道のりの全てが集約されるという作劇の美が完璧にはまったのです。
変身
そして真の王女となったミアは今度こそドレスに身を包み身も心も完全に王女となりました。
面白いのはこの王女のドレスが「変身」という物語上の機能を有意義に持っていることです。
いわゆる日本の変身ヒーローのような外連味溢れる格好良さの象徴として機能しています。
そして同時に彼女が王女というヒロインになることはそれまでの日常世界を打ち破ってもいるのです。