果たして彼のその後は何を意味しているのでしょうか?
ヒーローになったマット
マットはスティーブの喪失、そしてアンドリューとの対決を通して強大な力を持つ恐ろしさを学びました。
真のヒーローになった証として、死んだ二人に餞の言葉を贈ります。
アンドリュー、お前に言いたいことがある。すまなかった。
仕方なかったって分かって欲しい。お前は悪人ではない。
俺も生まれ変わって人助けをするつもりだ。
お前とスティーブの為に
わかるか?チベットに来たぞ。
美しいだろ?じゃあな。引用:クロニクル/配給会社:20世紀フォックス
マットも恐らくは二人を亡くさなければこのような決意をしなかったかもしれません。
しかし、強大な力にルール設定を作ったのも彼でしたし、一番情に厚い正義漢でした。
マットのヒーローとしての物語は今ここで漸く始まったといえるでしょう。
超能力の代償
マットはきっと一生をかけて超能力を手にした運命と向き合い続けることになるでしょう。
強大な力は相応の対価や心構えがなければ、宝くじ同様その人を破滅させる元凶となります。
面白いのは少年漫画のお約束である友情がかえって強大な力で決壊したことです。
アンドリューはそこを判らなかったからこそ道を誤ってしまったのでしょう。
そのことをマットはきっと人助けをしながら広めていくことになります。
チベットにカメラを置いた真意
マットは最後アンドリューが大事にしていたカメラをチベットに置いていきました。
きっとアンドリューの墓場として選んだ場所なのでしょう。
カメラはアンドリューにとって自身を象徴するアイデンティティーでした。
それをチベットに置くことで、彼の魂を浄化しようとしたのではないでしょうか。
数少ないアンドリューの理解者であったマットは誰よりも彼の苦しみを理解していました。
同時にそうすることで自身も第二のアンドリューにならないようにする戒めだったのです。
誰もが英雄になる時代
「クロニクル」はどうしてもその表面上の超能力描写やバトルの派手さなどに囚われがちです。
しかし、その根幹を成立させているのはアンドリュー達のしっかりしたキャラ立ちと脚本によります。
彼らの生き様は傍から見ると荒唐無稽ですが、決してそうではなく誰もが今はこうなりうるのです。
SNSやYouTubeなどを使って誰もが情報発信し、誰もが英雄になれてしまうような時代に来ています。
しかし、使い方を誤れば誰しもが第二・第三のアンドリューになってしまうのです。
そして英雄になるとは本来重い代償を払ってこそ成立することなのだということを本作は教えてくれます。
だからこそあれだけのヒットを生み出した名作となりえたのではないでしょうか。