特に女性諜報員に関しては三国志の諸葛孔明がこの言葉がいいでしょう。
一国が一国を謀るのもよし、それも立派な外交であり戦略である。
しかし、女性を用いて謀るなどこの上ない下策
二度とこのような策を用いることなかれ引用:三国志演義
このような下策を用いた時点で既にスペクター側の負ける原因は見えたようなものです。
タチアナの寝返り
そしてこのような下策を用いたことが結果としてタチアナが寝返る原因にもなっています。
ボンドがタチアナと出会った翌朝、スペクターは自身の諜報員ごとボンドを抹殺しようとしたのです。
ここで彼女は自身が所属していた組織の悪辣さに絶望し、完全にボンド側に付こうとしたのでしょう。
また、それだけではなくボンドの持ち合わせる紳士としての色気にも惹かれていたでしょう。
決して男女の愛というだけではなく、組織のえげつなさの双方から彼女が裏切る要因を作っています。
この辺の描写が的確かつ丁寧だからこそ、歴代でも屈指の人気を誇るボンドガールなのではないでしょうか。
男女の対決
「ロシアより愛をこめて」にはグレップとグラントという悪役が登場します。
彼らとボンド達の対決を見ていきましょう。
グレップとタチアナ
グレップとタチアナを対比させると、利用する者と利用される者の違いでありました。
それが見た目の老婆と美しき女性という形で出てもいますし、同時に中身も違いました。
グレップは家政婦の姿で油断させて靴に仕込んだ毒刃でボンドを殺そうとします。
一方のタチアナにはそのような毒気がなく純粋だったからこそボンドを簡単に受け入れました。
つまりタチアナはグレップに騙され利用された、いうなれば上司選びを誤ったことになります。
グラントとボンド
グラントとボンドの列車内での対決も見逃せません。今まで味方と思った者が急に敵と化しました。
最初はグラント優勢で進んでいたものの、勝敗の決め手となったのはボンドのアタッシュケースです。
グラントはその箱を正しい手順で開けないと催涙ガスでやられてしまうという情報を知りませんでした。
新聞記者として情報を常に追い求めていながら、土壇場でボンドの隠し持つ切り札に気付きません。
二人の勝敗を分けたのは完全な知略と情報の差によるものでした。
グレップを撃ったタチアナの心情
そして最終対決、ボンドとグレップの戦いで決め手となったのは何とタチアナの反撃でした。
ここは正に窮鼠猫を噛むという言葉に相応しい反撃でしたが、タチアナはきつくグレップを睨みます。
彼女はグレップの残忍さだけではなく、平気で他者を利用し踏みにじることへの怒りがあったのでしょう。
それがまた巡り巡って愛するボンドを理不尽に傷つけようとしているのです。
そのことが一番許せず、この一撃はタチアナにとって完全なスペクターとの決別だったのではないでしょうか。
色気溢れるOpening
007といえばお約束として出てくるあのオープニング映像ですが、本作は歴代でも色気に溢れています。
最初に出てくるのがいきなり敵のカットで、それこそ上記した謎めいた強大さを煽る演出から入るのです。