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橋本直樹が監督を務めた2019年の映画「駅までの道をおしえて」。
新津ちせ演じる8歳の少女サヤカが愛犬ルーを失い、笈田ヨシ演じる老人フセとの交流で悲しみを癒していきます。
一方フセも息子の死を引きずっており、大切なものとの別れを経験したという共通点は心の拠り所となりました。
しかしそんなサヤカとフセが一緒にいられる時間は長く保ちません。立て続きに訪れる別れに、少女は何を思うのでしょうか。
今回はそんな物語で、赤い電車の正体・フセがホームの反対側にいた理由・サヤカだけが残された意味を考察します。
赤い電車の正体
フセの最期の言葉を思い出したサヤカは、以前原っぱで愛犬ルーと一緒に見つけた線路の跡へ向かいます。
そこで赤い電車が駅のプラットホームへ入ってきました。存在していないはずの赤い電車の正体とは一体何だったのでしょうか。
あの世へ連れて行く電車
別れを描く物語の中で「電車」が死者をあの世へ連れて行くシーンは他の作品にも存在します。
例えば宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」では、主人公の少年とその友達が列車で銀河を旅します。
現実の世界で死んでいる友達はいつのまにか消え、主人公だけが残されるのですが、この不思議な体験は主人公の夢だったわけです。
この現実と夢の間で生と死を織り交ぜるストーリーは、「駅までの道をおしえて」によく似てるように見えます。
そしてもう1つ紹介したい例が「千と千尋の神隠し」です。こちらもやはりどこからともなく列車がやって来て、死者を乗せていきます。
電車がこの世とあの世を行き来する手段として確立されていることは、この2つの作品を見てもお分かりでしょう。
京急電鉄
本作に登場する赤い電車に京急電鉄の車両が使用されたことは有名です。
京急電鉄は東京から神奈川に走る電車で、フセの思い出の地である逗子へもアクセスできます。
逗子の海でコウイチローは死んでからずっと遊んでいて、フセの最期が来るまで待っていたのかもしれません。
だから赤い電車の中にコウイチローがすでに居たのではないでしょうか。
サヤカとフセが週末に逗子の海へ出かけた時に、コウイチローとルーの夢を見たのも、そこに彼の魂が残っていたからだと思われます。
赤い電車は逗子を出発し、原っぱでフセを乗せて天国へみんなで一緒に行くのでしょう。
なぜフセはホームの反対側にいた?
もしフセと同じ側のホームにサヤカがいたら、電車の出発時間ぎりぎりまでお別れの挨拶ができたはず。