最も分かりやすい理由が、光代を被害者にすることで、共犯の罪を背負わせないよう配慮したということです。
祐一は佳乃殺害の容疑だけでも充分重い罪になるはずですが、その罪にプラスしてもいいから光代を巻き込みたくなかったのでしょう。
警官へ自分が悪人であることをアピールした祐一ですが、この行為の根源は善人そのものだったのです。
光代を解き放つ
どこまでも自分と一緒について来そうな光代。ですが彼女はまだ何の罪も犯していない真っさらな状態です。
一度は運命が交わった相手ですが、自分のせいで彼女の人生を台なしにしたくなかったのではないでしょうか。
もし光代と結婚することになったとしても、殺人者の妻というレッテルは付き纏います。
今に目を向けるのではなく、将来どうなるのかを考えた時、彼女をここで解放しなくては申し訳ないと思ったはずです。
ラストの光代の言葉の真意
光代にとって祐一は初めて心が通じ合った相手であったはず。
しかし彼女は運転手の言葉に同意し、祐一を悪人と呼びました。光代はこの時何を思っていたのでしょうか。
日常に戻る
悪人と呼びながらも、朝焼けを見ながら涙を流す2人のシーンが映し出されます。
祐一とのこの瞬間を一生の思い出として心に閉じ込め、社会の流れに従うことにしたとも見えるのではないでしょうか。
彼が逮捕されて最愛の人を失ったのに、周りには何も変わらない日常がありました。
そこで彼女は自分も世間の人間であることに気付いたのだと思われます。
彼との出会いはもはや幻想に近いものだったのかもしれません。
悪人でもついて行く
光代の言葉は、世間では祐一を悪人とされている点を強調しているようにも聞こえます。
つまり世間の見解と光代の見解は違う主張をしているのです。
彼女の本音は「祐一は人を殺したから確かに悪人だけど、私には素晴らしい人だった」というところでしょうか。
光代はまだ祐一を信じ、彼が出所するまで待っていると考えられます。
恋から醒めた
祐一に突然首を絞められたことを光代が理解できないでいたとしたら、この最後の言葉の意味も変わってきます。
愛し合っている仲なら首を絞めるはずがないのだから、あの行動は祐一が本当に悪人だった証拠だと気づいたのでしょう。
脳裏に浮かんだ朝焼けのシーンを「あの人は悪人」と口に出すことで意図的に打ち消した可能性があります。
自分は騙されていたと考え直した結果の言葉だったといえるでしょう。
この解釈が一番悲しい結末ですが、光代のことを思っていた祐一の意図する通りになったという点ではベストなのかもしれません。
心を救われた祐一
生きているのか死んでいるのか分からない祐一の人生に、一筋の光が差し込みました。