出典元:https://www.amazon.co.jp/dp/B07RGYSQLT/?tag=cinema-notes-22
1939年に製作されたMGM映画「オズの魔法使い」で主役ドロシーに抜擢され、一躍ハリウッドの寵児となったジュディ・ガーランド。
彼女の最晩年(といっても亡くなったのは47歳)をレネー・ゼルウィガー主演で描いたのが「ジュディ 虹の彼方に」です。
ミュージカル女優、ジュディー・ガーランドが乗り移ったかのような圧倒的な演技をみせたレネーは2019年度(2020年発表)の
ゴールデングローブ賞、SAG賞、BAFTA賞、アカデミー賞など主要な映画賞で主演女優賞を受賞
引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/ジュディ_虹の彼方に
したのでした。本作でレネーは全曲吹き替えなしで歌っています。その圧巻の歌声に対する賞賛も多く聞かれます。
レネー自身もジュディほどではないにしろ、映画界では随分苦労し、精神的なダメージも受けていてしばらく映画界から距離を置いていました。
こうした体験を元にした内面から滲み出る彼女の迫真かつ圧倒的な演技には胸を打たれます。
ここでは、少女時代からショービズの世界に身を置き、結局ボロボロになっていったジュディの心の動きに焦点を当てて考察してみましょう。
当時の過酷なショービズの裏側
今なら決して許されないハラスメントの数々
映画の冒頭は、「オズの魔法使い」のセットでMGMのルイス・メイヤー社長が、ジュディに対して因果を含めるシーン。
今でいうパワハラの光景です。
未来にある輝かしいスターの生活を手にするか、普通の女の子に戻るのかと。まるで「赤ずきんちゃん」を騙すおおかみの甘言のようです。
しかも、相手はまだ映画の世界を深く知らない17歳の女の子。自信のないジュディは迷いますが、女優・歌手の道に進む決心に導かれていきます。
画面には「オズの魔法使い」で、やがてジュディが歩くことになる「イエローブリックロード」が見えています。
あの黄色いレンガの道は、結局ジュディが夢見ていた「虹の彼方」には繋がっていなかったことのメタファーと考えられます。
歌が上手かったばかりに、過酷な人生を歩むことになってしまうジュディのこれからの人生を暗示するような場面といえるでしょう。
麻薬が普通に使われる世界
太りやすかったジュディーは、ケーキもハンバーガーもダメ。痩せ薬、と称して手渡されたのは「アンフェタミン」という覚醒剤でした。
覚醒剤ですから、今度は眠れなくなります。すると睡眠薬や酒に手を出すようになっていくのです。
こうしてジュディの心身はクスリと酒と煙草でボロボロになっていきます。
MGMにとってジュディは金のなる木。とにかく働かせて働かせて、経営者らは売れる映画を作って儲けることしか頭になかったのでしょう。
薬漬けにしてまで子役を深夜まで働かせ、睡眠薬で眠らせる。金のタマゴは決して離さない。
夢ばかりの世界とは決して言えないハリウッドビジネスの闇が透けて見えるシークエンスです。
奪われるばかりの人生
圧殺されてきた子供ごころ
ショービズの世界で生きるために、ジュディの周りからは彼女を誘惑するようなものは一切排除されていきました。
仲良かったミッキー・ルーニーの仲も。バースデーケーキは食べると太るということでハリボテ。親からの愛も満足に感じられません。
さらに、ロンドンへ行くにあたっての我が子との別れ、自業自得もあるとはいえ、名声も、愛情も、お金も、彼女から離れて行ってしまいます。
とにかくジュディにあるものはその歌声だけで、あとは奪われるだけの一生だったといえるのではないでしょうか。
与えられる愛を渇望
だからこそ、彼女は終始「与えられる愛」に飢えていたと推察できます。
象徴的だったのはミッキー・ディーンズとのロンドンでの結婚だったと思われます。
しかし、ジュディの事を真剣に心配してくれたミッキーの愛情すら、自ら蹴飛ばしてしまうのです。
バースデーケーキの美味しさに驚く
散々なロンドン公演
1968年、ロンドンに渡ったジュディを待っていたのは、孤独とさらなる体調の悪化でした。
子供と一緒に暮らす資金稼ぎに単身ロンドンで頑張っていたジュディでしたが、結局子供たちは父親といたいと言ってきます。