メモを見たときまだ目崎は娘の無事を知りません。
知った瞬間14年前に引き戻されたのです。
周りの様子を伺い、当然見ているであろう警察の目を探ります。
このメモだけは見られてはいけないと考えたはずです。
このメモは目崎自身も目崎の家族も破滅に向かわせます。
そして彼は模倣犯の真意を悟り泣きました。
自分の罪の恐ろしさと露見することの恐ろしさで自分のために泣いたのです。
火の中に入れたのでは燃え残る可能性があると瞬時に判断したのでしょう。
メモを『無かったこと』にするには食べる以外の手段が選べない状況だったのです。
しかし指揮車はカメラをズームします。
目崎が意識しているのは周りの目だけですから、蹲って背を向けていればバレないと確信していました。
目崎がメモを食べたのはその時点でできる最善の策だったのです。
なぜ半分残ったのか
確実にメモを消すために飲むことを選択した目崎でしたが、それを一度に飲むには大きすぎたようです。
絶対に吐き出すわけにはいきませんし、態勢を変えることもできません。
小さくちぎって確実に飲もうとするのは当然だといえます。
しかし松岡は見逃しませんでした。
松岡の確保の命令が何秒か遅かったら残りのメモも口に入れていたかもしれません。
縦半分にちぎる方が自然なような気もしますが二つに折って裂いたのだとしたら説明はつきます。
メモの意味と結末
模倣犯は目崎が犯人だと確信しているにもかかわらず、なぜメモまで用意したのでしょうか。
そこには事件解決を早めるために仕組んだ巧妙な意図を感じます。
メモの内容
メモには明確に『犯人へ』と書かれていました。
『14年前』とか『小さな棺』などロクヨンの犯人にしかわからない言葉も並んでいます。
これは明らかに精神的に追い詰めることが狙いです。
良くすれば目崎が自首するでしょうし、悪くても警察が押収し逮捕させられます。
それを狙ってのメモなのです。
救われたのは誰
先に幸田が自首したのは『幸田メモ』を明らかにするためです。
その時点で雨宮が同行しなかったのは目崎の動向によっては『次の手段』が用意されていたのかもしれません。
自白によってそれは必要なくなったための自首だと思われます。
三上の起こした暴行事件によって雨宮の『次の手段』は使うことなく終わったということです。
またしても雨宮は誘拐殺人犯にならずに済みました。
結局雨宮は二人の刑事に助けられたということです。
その代償として、もっとも県警にいるべき二人が退職することになりました。
繰り返しますがこの物語は3人の父親の物語です。
雨宮の娘は殺され、目崎の二女は心を殺されました。
そして三上の娘は家出をしたままです。
しかし、最後のシーンで電話を掛けてきたのが三上の娘であるなら唯一の救いとなります。
あの電話が娘からであり、三上夫妻が娘と再会できる日が近いことを観客は心から願ったに違いありません。