正直に話すことが最善の関係ではありませんが、嵐と御園は一度本気で喧嘩した方が良かったかも知れませんね。

ツナグは便利能力ではない

嵐と御園の二度と戻らなくなってしまった関係が示すことはツナグが決して便利能力ではないということです。

誰もが死者と一度会って話をしたいという思いはあるでしょうし、それが叶ったらどれ程嬉しいことか。

しかし、人間関係とは決してそんな単純なものではなく、その背景には様々な思いが複雑に交差します。

嵐と御園のように拗れる所まで拗れた末に元に戻らなくなって一生後悔する関係もまたあるのです。

人間、自分が他人にしたことはいずれ何かしらの形で自分へ跳ね返ってきます。

ツナグは最善の結果だけではなく、このように負の側面もまたあることを嵐と御園が教えてくれました。

キラリと土谷

涙がキラリ☆

微妙な関係のまま終わってしまった嵐と御園に対して、キラリと土谷功一はどうなのでしょうか?

7年間もプロポーズしたっきりずっと失踪していた男女の関係は思わぬ結果を生みました。

果たして吉と出るか凶と出るか、考察していきましょう。

頼みごとの意図

キラリは親に遺品を届けて欲しいと土谷に頼みます。

これは即ち土谷とキラリが嘘偽りなく本当に愛したことの証明ではないでしょうか。

そして同時にこれがキラリにとっての結婚報告であったと思われます。

キラリは自分の死ですらも全てを「嘘」で誤魔化して生きていたことが判明します。

しかし、そんな彼女の中にあったたった一つの真実…それが土谷との愛でした。

だからこそ彼女は両親に嘘ではない本当の自分を見せたかったのでしょう。

ずっといえなかった本音

「本音で話す」は武器になる

土谷はキラリと再会した時、以下の頼みごとをいわれました。

幸せになってね。
7年間も土谷さんが待っていてくれたって聞いて、物凄く幸せだって思った。
嘘だらけの私を愛してくれてありがとう。
だからもう待たなくていいんだよ

引用:ツナグ/配給会社:東宝

これは嘘で全てを誤魔化していたキラリが最後に見せた「真実」ではないでしょうか。

自分の嘘で、しかも死んだことすらも誤魔化した自分を健気に7年も土谷は待っていました。

それは同時に土谷の心の時計をも止める原因になってしまっても居るのです。

キラリが土谷にしたのは土谷の心を解放することではないでしょうか。

誰よりも深く愛してくれたからこそ、キラリは等身大の自分として彼に答えたのです。

変化への恐れ

この頼みごとに至るまで描かれた土谷の心境もまた色々考えさせられるものがありました。

彼はキラリが死んだという事実が受け入れられず、再会をずっと恐れていたのです。

何故かというとキラリと会うことで自分が変わることが怖かったのではないでしょうか。

7年間も待っていたのに先にあったのは婚約者の死、会ってもその事実は変わりません。

しかし、変化をしていかなければ人間そこから先へ進むことは出来ないのです。

だからこそ、痛みを伴っても土谷は変化を受け入れることがこの試練にあったのでしょう。

佐藤隆太もまた非常に繊細ながらも大胆に土谷という好人物を演じてくれました。

嘘と真実

嘘は一本足で立ち真実は二本足で立つ―言葉は時代を超える フランクリン格言集 (渡部昇一ブックス)

土谷とキラリの関係は嵐と御園とは逆に非常に綺麗な美しい関係で終わりました。

この二組を見ていると、ツナグを通して「嘘と真実」をテーマに描いていることが見えます。

嵐と御園は真実よりも嘘を優先したばかりに嘘の関係のまま終わってしまいました。

一方土谷とキラリは片方が嘘をついていながらも真実の愛がそこにはあります。

人生は常に嘘と真実のバランスですが、本作は登場人物がそのテーマを凄く複雑に表現しています。

歩美の両親の死と鏡

両親の送り方