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直木賞作家の乃南アサの小説を原作とした映画「しゃぼん玉」が2017年に公開されました。
この作品はテレビドラマ『相棒』の助監督を務めてきた東伸児が手掛けたことでも話題です。
林遣都演じる伊豆見翔人は通り魔・強盗傷害を起こしてきた犯罪者ですが、脅して乗ったトラックに宮崎県椎葉村で降ろされます。
そこで彼は市原悦子演じる老婆スマと出会い、椎葉村での生活を始めました。
祭りの準備をきっかけに藤井美菜演じる美知と知り合い、惹かれていきますが、彼女には悲惨な過去が。
さらにスマの金を奪いに来た相島一之演じる豊昭の姿と自分を、伊豆見は重ね合わせます。
村の人々との関わりは、伊豆見にどのような変化をもたらしたのでしょうか。
今回は、ラストに伊豆見が行き着いた先・自首を決意したきっかけ・スマにとっての伊豆見の存在に迫ります。
伊豆見とスマの出会いは偶然か
伊豆見を降ろした長距離トラックが立ち去った後、山道を通る車も人もいません。
ですがバイクを一台発見。周りには誰もいませんし、盗むには絶好のチャンスです。
好都合な展開が怪しさを醸し出します。もしかしたら伊豆見に盗ませるために置かれていたのではないでしょうか。
事情を聞かないスマ
隙を突いてお金を盗もうとした時でさえ、スマは伊豆見を責めませんでした。
彼女はあたかも全ての事情を最初から知っていたかのように見えます。
もしかしたらスマは日常的に原付で都市部へ出掛けていて、通り魔の話を聞いていたのかもしれません。
たまたま出掛けた帰りに伊豆見と遭遇してしまい、怯えたら殺されるかもという恐怖があったと思います。
しかしそれと同時に、まだ子供だから更生の機会を与えようという感情が湧いた可能性もあるのではないでしょうか。
スマと伊豆見はまるで芥川龍之介の「蜘蛛の糸」に登場するお釈迦様と罪人の関係のようにも見えます。
そう考えると家に招き入れるための罠としてバイクを置き、盗ませたのかもしれません。
冷蔵庫のお金
スマがお金を冷蔵庫の奥に隠しておいたのは、豊昭対策のように見えますが、本当にそれだけでしょうか。
実際は伊豆見が再び犯罪に手を染めるかどうか試していたように見えます。
「蜘蛛の糸」のお釈迦様が地獄に糸を垂らしたように、相手が一番欲しがるものを見せたと考えられるのです。
つまり己の欲望と向き合わせるという更生プログラムの一環だったのかもしれません。