そして、砦の中で兄妹の人格と会話するジャックを見て多重人格だと確信し、自らを危険にさらしビリーの人格をジャックから呼び出したのです。
アリーが薬を片付けた真意とは
アメリカでは第二次世界大戦後に軍人の神経症を緩和するために、心理カウンセラーが活躍しており精神病医学では先進国です。
アリーがポーターからもらった本も最新版の心理学書であり、アリーは心理カウンセラーを目指していたとも考えられます。
アリーが屋敷で暮らそうと決めた真意
解離性多重人格の治療には投薬よりも、安心できる環境と心理カウンセラーの知識が必要なのです。
そのことをアリーが学んでいたとすれば、田舎の医者の診断と処方する「抗精神病薬」が役に立たないことはわかります。
アリーが忌まわしい屋敷に暮らすことにしたのは、それを理解している自分しかジャックを回復させられないと思ったからではないでしょうか?
薬よりも必要なもの
ジャックの多重人格症が落ち着いていたのは、それらを呼び覚ます恐怖の対象が消えて、安心できる場所と愛する人がいたからです。
アリーは自分の撮ったジャック達の写真をフレームに入れてプレゼントします。アリーがジャックに施してきたことの成果を見るのです。
ジャックは写真の中のジェーン、ビリー、サムをみつめながら優しく微笑むのでした。
安全な道を見つけたよ。こっちだジェーン!
引用:マーロンボーン家の掟/配給会社:ユニバーサルピクチャー
ビリー達の幻影が言った言葉で屋敷が安全な場所だと認識できたジャックは、フレームのガラスに映り込む自分の顔を見て再び微笑んだのです。
つまり、鏡への恐怖も克服できたのです。ジャックは愛するアリーと共にマローボーンの屋敷で暮らしていけるはずです。
愛のOUR STORYでした
この作品のジャンルはホラーとされていますが得体の知れない恐怖ではなく、身近な人間に植え付けられた恐怖に怯えるストーリーです。
外的な恐怖で心理的に傷つき精神が壊れていく怖さがこの映画のテーマで、その恐怖から命がけで兄弟を守ろうとする長男の愛情の物語です。
そしてさらに、ジャックの心の中に生きる兄弟が力を合わせて恐怖に立ち向かう兄弟愛のストーリーともいえます。
解離性障害は現代社会の今、増えている疾患ではないでしょうか?作り物のホラーにはないどこにでも潜んでいるホラーなのです。