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本作は伊坂幸太郎による小説『ゴールデンスランバー』が原作です。
中村義洋監督によって映画化され2010年の公開でした。
原作の伊坂幸太郎と監督の中村義洋は『アヒルと鴨のコインロッカー』『フィッシュストーリー』に次いで3作目のタッグとなります。
本作は仙台を舞台に首相暗殺犯として警察に追われる青柳を主人公として描かれていますが、実は人と人との信頼がテーマです。
そして堺雅人演じる青柳と並び際立つキャラクター『キルオ』が強烈な印象を残しました。
この『キルオ』とは何者なのか、また青柳が整形した理由や自首の必要性についても徹底考察していきましょう。
キルオの正体を徹底考察
濱田岳が演じる『キルオ』は本作の登場人物の中でも群を抜いて人気の高いキャラクターでした。
濱田岳のイメージがあまりにもキルオにぴったりだったのは伊坂氏が濱田岳で『あて書き』したからです。
そんな『キルオ』とはいったい何者でなぜ青柳の逃亡に手を貸したのでしょうか。
『三浦』は本名なのか
死んだキルオの携帯に、情報をくれた整形外科医から電話がかかりました。
その時三浦君の電話かと確認しましたがそれがキルオの本名なのでしょうか。
キルオは平気で人を殺す通り魔殺人犯ですからそう簡単に本名は名乗らないでしょう。
自分を整形してくれた医者を信頼して本名を告げているのか、偽名なのかは映画や原作の中には描かれていませんでした。
もしかしたら整形外科医に名前を聞かれた時、テレビにたまたま映っていたサッカーの試合を見て『三浦』と答えただけかもしれません。
キルオと小鳩沢
キルオには『ショットガン男』の小鳩沢という宿敵がいます。
小鳩沢がなぜ宿敵なのかは不明ですがお互いに命を狙い続けている間柄です。
キルオは死ぬ間際に、青柳の状況を面白がり『敵の敵は味方』という理論から気まぐれで助けたと言いました。
それ以上のことは本作中にも原作にもありませんし、理由を匂わせる伏線も見当たりません。
小鳩沢をつけ狙いながら日々をおくるキルオにとって彼を殺す以上に重要なことは無いのです。
殺すためならどんなことでも迷わず実行に移します。
言い換えると小鳩沢を殺すためだけに生きているのです。
そんなキルオが小鳩沢以外に興味を示したのが無実の罪で警察に追われている青柳でした。
キルオの正体
キルオとはいったい誰なのでしょう。
2年前に起こった連続刺殺事件の犯人で整形していることは明らかにされています。
しかしこの『キルオ』を自称する『三浦』は本当にキルオなのでしょうか。
冒頭(ラストに繋がるシーン)で晴子の夫が「キルオはびっくりした?と言って人を殺す」という噂を口にしています。
それを考えると「びっくりした?」というフレーズを使う『三浦』はキルオです。
しかし通り魔事件は有名ですから『なりすまし』の可能性もあります。
原作では保土ヶ谷達と同じ病院の入院患者に『大人びた中学生』が登場していました。
彼が『キルオ』ではないかと主張する読者もいるようです。
しかし決定的な理由はなく推論の域を超えることはありませんでした。
映画ではその中学生の登場シーンはありません。
キルオが青柳を助けた理由
キルオは文字通り命を賭して青柳を助けました。
もしかしたらキルオは青柳にずっと以前の自分を見たのかもしれません。
無実を証明するために必死で戦った頃の自分を。
そして全てに絶望し生きる意味を失った今の自分と同じにしてはいけないと感じたのではないでしょうか。
キルオが『青柳の偽物』と同じ仕事をしたとすれば大金を持っていたことも説明できます。