ヒーローが活躍する為にはあくまでも「悪」の存在が必要不可欠であり、それが本作ではムスビルなのです。
彼らは情報商材を生かしたセミナーで信者を増やし、原価ゼロの宝石を高値で売りつける詐欺集団であります。
そのように具体的かつ現実的な「悪」の存在が和人をヒーローとしての活躍へ駆り立てるのです。
そうした古典的な勧善懲悪のヒーローものの構図をメタフィクションとしてフルに活用しています。
これで和人の中ではっきりと目標が出来上がったのもまた大きな存在でしょう。
パーキンソンの法則
以上をまとめると、究極的にはパーキンソンの法則が和人に気絶体質を克服する要因になったといえます。
人間必要に迫られない限りどうしても自分をついつい甘やかして楽な方に流されてしまいがちです。
和人がこれまで気絶体質を克服出来なかったのはダメな自分を甘やかして楽な方に生きてきたからでしょう。
それがスペシャルアクターズに来てムスビルと戦うことで否が応でも命がけで戦う状況が発生しました。
それが和人にいい緊張感をもたらし、楽な方へと逃げる道がふさがれ体質克服へ辿り着けたのではないでしょうか。
カルト集団を倒せた理由
和人達は無事にカルト集団「ムスビル」を倒すことに成功しましたが、それは何故でしょうか?
とんでもないネタバレと共に終盤の展開から逆算的に見ていきましょう。
全てが「スペシャルアクターズ」の芝居だった
身も蓋もないことをいえば、ムスビルの存在自体が全てスペシャルアクターズの仕組んだ芝居だったのです。
即ちこれ自体が和人は弟・宏樹達にグルで騙された格好であると示す罠になっています。
最後の最後、和人の頑張り・努力ですらも全て八百長・茶番劇でしかなかったというわけです。
普通ならここで騙されたと怒ってもよさそうなものを怒らない辺り和人もお人好しなのか何なのか。
まあヒーローものは最後に正義が勝たないと話にならないのですが、それすらビジネスに利用したわけです。
コミカルな中にも何だか妙な「大人の事情」が見えてしまうのが皮肉が効いています。
情報入手が雑
この事実を裏付ける怪しい点として、スペシャルアクターズの情報入手の雑さです。
旅館の件も含む敵側の極秘情報を何故アクターズが知っていたのでしょうか?
内通者でも居ない限りそのような情報漏洩は有り得ず、かつその手段すらシナリオで組みます。
しかもそのシナリオは一度たりとて初期構想から破綻せず全て成功してしまっているのです。
またムスビルもわざわざ式典のことをご丁寧にスペシャルアクターズにバラしています。
そのような真似をする親切な悪の集団など現実にはまず存在せず、全て秘密裏に進めるものです。
だから全てが最初から段取り通りに進められていたと考えれば辻褄の合いすぎた話も納得でしょう。
警察もグルだった可能性
しかし、これだけ大がかりな仕掛けを行うとなれば、当然警察にも事前に話は振っていたでしょう。
これは警察が実は裏で暴力団をはじめ悪側と繋がっている可能性があることの揶揄と推測されます。
警察だって現実に悪党や犯罪組織、犯罪者が居なければその存在自体が成立しません。
だからあのムスビル逮捕も含めて警察もまたグルだった可能性が示されています。
そう見ると、あのムスビルの逮捕シーンのカタルシスが全くなくなってしまうでしょう。
そこへ持っていくまでの流れをよく緻密に組み込んだものです。
事務所に誘った宏樹の目的
大がかりな仕掛けを行った張本人は弟の宏樹ですが、何故彼はこんなことをしたのでしょうか?