あらすじを振り返りながら、彼の目的についてじっくり考察していきましょう。

事業拡大へのステップ

~事業拡大・設備投資・運転資金の着実な調達~ベンチャー企業が融資を受けるための法務と実務

一番にあったのは宏樹が目標としていたIT社長としての事業拡大へのステップです。

和人を騙したことも含めて弟は恐らく現実主義で利のない話には乗らないタイプでしょう。

あがり症の兄を演技を通して立ち直らせたという功績は大きなビジネスチャンスとなります。

でなければあれだけ大がかりな予算がかかる仕事を俳優事務所の事業にはしないでしょう。

幾ら兄弟であってもそこはいい年した大人同士の関係ですから、綺麗事だけでは成り立ちません。

非常に賢く自分の身を弁えて振る舞っていたのではないでしょうか。

兄に自信をつけさせたい

その上でもう一つあったのはやはり兄には自信を持って欲しいという想いがあったのでしょう。

言葉にこそしませんが、宏樹は和人がヒーローに憧れ役者を目指していたのを小さい頃から見ています。

そして兄は気絶体質さえ治せば将来俳優として大きく化けると見抜いていたのではないでしょうか。

世の中適材適所があって、俳優業が向く人とそうでない人と色々存在します。

弟の宏樹は恐らく俳優よりも裏方のディレクターやスタッフに向いていたのでしょう。

性格から考えても凄く冷静沈着で自分の立ち位置を客観的に分析出来ている印象でした。

そうした兄へ自信を植え付けさせることこそ弟が真に狙っていたことではないでしょうか。

フィクションとは”優しい騙し”である

華麗なる騙しのテクニック 世界No.1の詐欺師が教える

こうして見ていくと、フィクションとはどこまで行こうと“優しい騙し”であると分かります。

だから弟宏樹が兄に対してやったことは善意から来るものとはいえ所詮“騙し”でしかありません。

しかし、多かれ少なかれ人間は何かしらの形で他者を騙し、自分を騙して生きているものです。

大事なのはその騙しによって人を傷つけるのか幸せにするのかの違いになります。

だからある意味では上田監督が自身を弟宏樹に投影していた部分もあるのではないでしょうか。

作品とは多かれ少なかれ作り手の人間性や性格、生き様などが無自覚にでも出るものです。

そうした”優しい騙し”の上に本作は成立していることを示してくれました。

まとめ

低予算の超・映画制作術 『カメラを止めるな!』はこうして撮られた

いかがでしたでしょうか?

映画「スペシャルアクターズ」はメタフィクションとして演技の面白さを伝えてくれました。

それは同時に「環境や条件さえ整えば誰もが役者になれる」というメッセージかもしれません。

昨今誰しもがネットのインフルエンサー業などで簡単にヒーローになれる時代となりました。

ヒーローという存在は決して画面の向こうではなく自分の中にこそあるのです。

気絶体質の兄・和人は見事に自分の弱さに打ち勝ち、憧れのヒーローや役者へ一歩近づきました。

勿論向き不向きはあるし、本当に大成するかどうかは色々な要素が複雑に絡んできます。

しかし、環境と心構えと実践があれば何かしらの形で道は開けてくるものです。

成功するまでそれを諦めないことこそが何よりも大事なことではないでしょうか。

そんなコメディじみた中にも温かく優しいメッセージに満ち溢れた娯楽作でした。

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