また息子のジホは、幸運のお守りとされている四つ葉のクローバーを集めて窓に貼っておくなど、死んでしまったスアとの再会を強く信じています。
そんな2人のスアへの強い思いが、死んでしまったスアを現世へ呼び戻すという奇跡を起こしたのかもしれません。
トンネルに現れた理由
ウジンとジホの前に現われたスアは、トンネルのなかで眠っているところを発見されました。
家族との再会の場所が、自宅や思い出の場所ではなく、どうして「トンネル」だったのでしょうか?
異世界の狭間
通り抜けた先の場所同士を繋ぐ役割を持つトンネルは、言わば別世界を繋ぐものとして描かれていると考えられます。
物語冒頭に登場する絵本においても、雲の国にいる母ペンギンはトンネルをくぐって、赤ちゃんペンギンがいる地上の世界に戻ってきているのです。
また、梅雨明けとともにスアが雲の国に帰る時も、トンネルの先に向かって歩いていく様子が描かれています。
この描写から、トンネルの先は雲の国に繋がっていることを表現しており、現世と雲の国の狭間に当たる場所のトンネルに、スアは現われたのでしょう。
霊や気が溜まりやすい場所
辺りが暗く、進むには長い道を通り抜ける必要があるトンネルは、スピリチュアルの観点から、霊や様々な気が溜まりやすい場所ともいわれているのです。
トンネルを「不思議な現象が起こる場所」と設定することで、死んだスアとの再会がより奇跡的なものであることを表現しているのではないでしょうか。
なぜ雨の日に現われたのか?
物語において特に印象的な「雨」の描写ですが、トンネルにスアが現われた時も雨が降っていました。
また、ジホが劇中で度々「梅雨にママが帰ってくる」と話していますが、スアはなぜ雨が降る梅雨の時期に家族の前に現われたのでしょうか?
雨の役割
実は雨が降っている日に戻ってきたのは、スアだけではありません。
物語冒頭の絵本のなかで、母ペンギンが雲の国から地上の世界へ戻ってくる時も雨が降っているのです。
どちらも「死んでしまっているキャラクターである」という共通点があるうえ、スピリチュアルの観点では、水は人の想念を写すとされています。
雨を通して、スアや母ペンギンの思いが現世に繋がったと考えると「雨」は雲の国と現世の仲介をする役割を持っているといえるでしょう。
期限付きの幸せを表している
スアが現われたのは、春から夏に移り変わる際の雨が多く降る「梅雨」の時期でした。
梅雨は、一般的に雨が頻繁に降る6月中旬~7月の中旬までのほんのわずかな期間をいいます。
雨が死者と現世を繋げていることと合わせて考えると、現世に戻ってきたスアと家族の毎日が、束の間の幸せであることを表しているのではないでしょうか。
スアとの日々に「梅雨が明けるまで」と期限を設けることで、3人の幸せな日々をより印象深いものにさせているのでしょう。
なぜ記憶喪失だったのか?
ウジンとジホの前に現われたスアは、出会った当初には家族のこと・自分自身のことの全てを忘れていました。
後ほど生前のスアとしての気持ちや、妻・母親としての自覚が芽生えてきましたが、どうして出会った時には記憶喪失状態だったのでしょう?