出典元:https://www.amazon.co.jp/dp/B00SS55DE2/?tag=cinema-notes-22
恵まれない境遇の大城家を描きながら、希望の光を見つける達夫と千夏の心情を繊細なタッチで表現した「そこのみにて光り輝く」。
数々の映画賞に輝いた名作です。
ここでは、大城家との関わりや拓児を思う気持ちの動きから、罪を犯した拓児を抱きしめる達夫の心情を考察しました。
ラストの眩しい光の意味についても、千夏と達夫の想いをもとに解説します。
「そこのみにて光り輝く」は佐藤泰志さん原作の小説を、「オカンの嫁入り」の呉美保監督が映画化。
「海炭市叙景」や「オーバーフェンス」とともに佐藤泰志さん原作の函館三部作といわれています。
主演は綾野剛さんと池脇千鶴さん。共演は菅田将暉さんです。
第87回アカデミー賞外国語映画賞部門に日本代表作品として出品されました。
池脇千鶴さんは第38回日本アカデミー賞で優秀主演女優賞を受賞しています。
引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/そこのみにて光り輝く
達夫が拓児を殴った後に抱きしめた理由とは
傷害事件を起こした拓児がたどり着いたのは、達夫の部屋の前でした。
拓児を殴った後に抱きしめた達夫はどんな気持ちだったのでしょう。
千夏を思う拓児は家族を侮辱され逆上(ぎゃくじょう)した
拓児が逆上(ぎゃくじょう)したのは、千夏や家族に対する侮辱的なことばを聞いた瞬間でした。
拓児にとっては、前科者の自分を迎え入れてくれた姉であり家族です。
とりわけ姉の千夏には、達夫との関係が進展して幸せになってほしいと願っていたはず。
心の底には、これでまた千夏に迷惑をかけてしまうという葛藤もあったでしょう。
それだけに、冷静になったときに自分の行動に絶望し達夫に救いを求めたと思われます。
拓児は、達人も同じ気持ちでいてくれると信じていたのです。
達夫は傷心の拓児を抱きしめ涙を流す
中島の一件は、達夫にとっても許せないことですが、それ以上に拓児が心配でした。
拓児の寂しさやつらさがわかるだけに、やりきれない思いに駆られたのでしょう。
達夫は、拓児を殴った後抱きしめ涙を流します。初めて感情をあらわにして拓児にとった行為でした。
愛する者のプライドを守るために、暴力を使ってしまった拓児の心の叫びが痛いほどわかったのです。
拓児を殴った拳の痛みは、拓児を本当の兄弟のように思う達夫の心の痛みでした。
拓児にも達夫の気持ちが通じたのでしょう。冷静になった2人の雰囲気はそれまでとは違う親近感がありました。
達夫の拓児への思いは兄弟愛に近いものがあった
達夫の心情は、妹の佳代からの手紙からも読み取ることができます。
映画の最後に読まれる佳代の返信には、達夫が新しい生活を始めることに佳代の安堵(あんど)の気持ちがあらわれていました。