失ったものは大きいけれど、そこから得た駿也に対する気持ちは晶の大きな財産になりました。
愛する父を亡くした駿也の願いとは
駿也は父修平が死んだことを、受け入れられないでいました。晶と2人になってしまった駿也の願いとは何だったのでしょうか。
消えない亡き母への想い
駿也は本当の母親の顔もわかりません。それだけに、自分を生んでくれた母への思慕はとても深いものがあります。
後妻に来た晶を受け入れられないのも無理はありません。
晶はそんな駿也に献身的な愛を注ぎますが、駿也にとっては面倒を見てくれる存在にしか映らなかったのです。
東京の学校でも他の生徒と自分は違うという気持ちから、友達との距離も離れてしまい孤立していたと思われます。
それでも、晶のことを思ってか、自分の本当の気持ちを隠して生きてきたのでしょう。
父修平の存在と晶に対する願い
晶の前では明るくふるまえるのは、父親修平がそばにいて心のバランスが保たれていたからだと思われます。
鉄道に関する会話も父と子の大事な絆でした。その修平も病に倒れある日突然姿を消してしまったのです。
駿也が晶に運転士になってほしいと望んだのは、父修平がそうだったように鉄道という共通の話題を持ちたかったのでしょう。
駿也なりに晶との接点を求めていたのです。
半成人式で他の生徒と自分が置かれた立場が違うことを見せつけられた修平は、晶にひどい言葉を浴びせてしまいます。
心のよりどころを無くした駿也の思いが、晶の前で修平の死を受け入れない態度につながったのです。
今まで我慢していた父への想いがあふれ出した瞬間でした。
駿也には、鉄道を通じて自分と同じ喜びを分かち合える大人の存在が必要だったのです。
晶と駿也の家族としてのこれから
晶と駿也は、修平のいない環境の中で家族として生きていくことを決めました。
家族としてのたびだち
修平や駿也の鉄道好きは晶にもよくわかっていて、鉄道の話が始まるとついていけない自分に寂しい思いもしていました。
晶は「鉄道」で駿也とつながることができると考えたのでしょうか。
事故に遭遇したり、ブレーキのタイミングが遅いと厳しい指導を受けながらも一人前の運転士として成長する晶。
晴れて家族をのせてディーゼルカーを発進させたとき、晶と駿也は家族としてのたびだちを迎えたのです。
晶の存在を自分の中で理解し心の整理ができた駿也
半成人式から飛び出した駿也は、言ってはいけない心の叫びが口から出て晶を傷つけてしまいました。
自分の面倒を見てくれる晶に感謝しながらも、父や母を亡くしてしまった寂しさに耐え切れず思わず吐露してしまったのです。
それは、駿也が初めて晶に自分の本心をさらけ出した瞬間でした。
本心を隠さずに言い合えることは、家族としての大事な要素のひとつではないでしょうか。
駿也の中で、晶をひとりの大人として理解し、母親ではないけれどかけがえのない存在と思えたのです。
子供なりに、自分の心の整理ができた駿也。晶との家族としての生活の第一歩を踏み出しました。
奥薗家のかぞくいろ
血のつながりのない2人が、お互いに家族の一員として認め合えたことで、新しい家族の形が見えてきました。