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映画「BLACKFOX」は野村和也総監督の下スタジオ3Hzが製作した2019年公開の近未来SFアニメ作品です。

スタッフは篠原啓輔監督、ハヤシナオキ脚本、キャラクターデザインが斎藤敦史という布陣になっています。

主題歌はfripSideが担当し、また東映が「BLACKFOX: Age of the Ninja」という連動企画で実写化もしました。

内容はある忍者屋敷に住む忍者一族の石動律花が敵の襲撃を受け、復讐を心に戦うという王道系のものです。

本稿では主人公律花がリリィとして復讐に走る理由を徹底的に考察していきましょう。

また、彼女の父親や祖父の死との関連性、制服を脱ぎ捨てる真意なども見ていきます。

近代化する忍者達

近代化の理論 (講談社学術文庫)

本作最大の特徴として挙げられるのは「忍者」というジャンルの近代化・現代化ではないでしょうか。

古来忍者というジャンルは侍と並ぶジャパニーズファンタジーの一分野たる時代劇の一つでした。

それをドローンや科学研究所など近未来SFの要素を混ぜて再構築しています。

日本でも忍者時代劇作品はありますが、いずれも古代の忍者をそのまま現代に持ってきたものばかりでした。

本作はその辺りをかなり現代風に洗練させることで時代劇そのものを現代劇に落とし込んでいます。

この「時代劇の現代化」が本作に象徴される新たな時代の風ではないでしょうか。

リリィが復讐に走る理由

本作で一番の戦う動機となっているのはリリィの復讐でした。彼女が復讐に身を窶す理由は何でしょうか?

ネタバレ込みでとことんじっくり掘り下げていきましょう。

時代劇を描くため

時代劇伝説 チャンバラ映画の輝き(日本映画史叢書 4)

まず作劇の都合として、本作がメインコンセプトに描きたいものはあくまでも「現代風時代劇」です。

かといってただ忍術が得意なそこら辺の若者、それも少女3人が主役となる程度では時代劇とはいえません。

単なるジャパニーズファンタジーの忍者を現代風に再現すると時代劇コントに見えかねないリスクがあります。

典型は「ミュータントタートルズ」ですが、アニメ・実写共に時代劇コントの側面が強く出されました。

勿論本格的な忍者ものの時代劇を描きたいわけではないからあの作風でも全然問題はないのです。

でも本作はその路線ではなく真正面からシリアスな時代劇を追求することを目指しています。

そこでまずは復讐という重たい要素を作品のメインテーマに持ち込んだのでしょう。

主従関係の代りとなるもの

スーパー戦隊 Official Mook (オフィシャルムック) 21世紀 vol.9 侍戦隊シンケンジャー [雑誌] (講談社シリーズMOOK)

もう一つチャンバラ時代劇を成立させるために必要な要素として主従関係が挙げられます。

日本だとこれをメインに描いた現代風時代劇としては特撮「侍戦隊シンケンジャー」などがありますね。

しかし、あの作品でそれが可能となったのは一年間やれる戦隊ドラマの枠だからこそです。

逆にいうと一年がかりでやっと再現できる位主従関係という要素は複雑さと高尚さを伴います。

主従関係という現代に存在しないもの、かつそれを100分のアニメ映画で再現は不可能でしょう。

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