もっとも、トラブルの元になったのはボーカルのジョニーだけでトシと豆蔵は意見すらしないのですが。

どんなに実力がある個性派のグループでもやっていく内に個性や考えの違いから解散話も出ます。

かのビートルズだって最終的にはその個性や考えの方向性が修正不可能にまでズレたのが原因ですから。

売れることを優先したいのと自分達の理想の音楽を追究することの葛藤は常にあって当然です。

大人達との衝突

その売れることと理想の音楽の衝突が最大限に出ていたのが上層部や局の大人達との衝突でした。

「悪魔とドライブ」はその意味で「売れる」ことを前面に押し出した曲でヒットもしています。

しかし、そのような目先の数字ばかりを見ても永きにわたって愛される名曲は生まれないでしょう。

中島はそのことを直感で分かっていたからこそ、大人達と何度もぶつかることになるのです。

数字はあくまでも結果であり、きちんとした曲を作った対価として頂くものになります。

時代のニーズとの衝突

時代と子どものニーズに応える性教育―統一協会の「新純潔教育」総批判

また、80年代後半~90年代初頭は時代のニーズとの戦いでもありました。

この時期はアイドル氷河期でもあり、次々と音楽番組も減って業界自体も不況に陥っています。

中島が「アイデン&ティティ」を出そうにも中々出せなかったのも時代のニーズが影響するのです。

こればかりは本人達でもどうしようもない大きな運が関わる要素です。

冷たいいい方をすれば、中島達はこの時代にしぶとく生き残れるだけの運がなかったのかもしれません。

そうした人生の世知辛さもしっかり織り込まれているからこそ中島の葛藤にも深みが出るのです。

氷河期世代の挫折と憂鬱

就職氷河期世代が辛酸をなめ続ける (Yosensha Paperbacks)

こうして見ていくと中島をはじめとするSPEEWAYは氷河期世代の挫折と憂鬱の象徴であるともいえます。

バブルが弾けて企業が次々と整理解雇を行い求人も大量に減らし、夢見ることが不可能になった時代なのです。

本作では中島達を通してそのような氷河期世代の挫折と憂鬱を細かく描いていて、痛々しく心に刺さります。

無茶をしなければ生き残っていけなかった世代の苦労があるからこそ今の日本があるのです。

その中で自分自身とは何か?を突き詰めた中島達の生き様は本当にロック魂に満ち溢れています。

まとめ

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いかがでしたでしょうか?

本作は中島のバンドブーム時代の苦悩と葛藤を赤裸々に描くことで時代性を切り取った作品です。

また、SPEEDWAYは決してバンドとして爆発的人気を誇って売れたわけでもありません。

しかし、彼らは自分達の方針を曲げずに信念を貫き、小さいながらも自分達の音楽が出来るようになりました。

そして中島もずっと自分を応援してくれた聖母のような彼女へのプロポーズをつかみ取ったのです。

どんな苦境の中でも暗い時代の中でも諦めず何かを続けていれば何らかの形で花は咲きます。

そしてそれは正に今激動の時代を迎えつつある我々への泥臭くも力強い応援歌となってくれるでしょう。

どんな時も心にディランのような、そして中島達のようなロック魂を持ちたいと思わせてくれる一作です。

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