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映画「エグゼクティブ・デシジョン」は1996年公開のジャンボ機ハイジャックを題材とした作品です。
キャストにカート・ラッセルとハル・ベリーなど今見るとかなり豪華なキャスティングを据えています。
国内のパッケージではスティーブン・セガールを前面に押し出していますが、本作の彼は完全な脇役です。
よってセガール映画でないことに失望したという感想も多く見られますが、内容は非常に緊張感に満ちています。
今回はテロリスト主犯格ナジの語るテロの目的をネタバレ含めてじっくり考察していきます。
またジーンとの共闘の理由や昏睡から目覚めたキャピーの覚悟などもしっかり見ていきましょう。
政治的ハイジャック
ハイジャックは目的別で種類が分かれますが、本作はいわゆる政治的ハイジャックに分類されます。
もうこの時点で本作のテロリズムのヒントどころか答えまでいってしまいますが、本作は実に先見の明がありました。
というのも、本作公開の5年後にはあの歴史的大事件たるアメリカ同時多発テロ事件が起こったからです。
世界史に大きな爪痕を残した9.11も分類自体は政治的ハイジャックであり、本作はその先取りともいえます。
このことを念頭に置いた上で本作におけるテロリズムを読み解いてきましょう。
ナジが語るテロの目的
本作のテロリストは政治的ハイジャックを行いますが、物語途中で主犯格ナジが目的を語ります。
果たして彼が手の込んだハイジャックを行ったその背景にあるものは何だったのでしょうか?
ワシントンへの直接攻撃
結論からいうと、真の目的は主要都市ワシントンD.C.へ攻撃を仕掛けてアメリカへ陥れることでした。
上記した通り、これは9.11を予見させるに相応しい政治的ハイジャックに分類されるものです。
旅客機を乗っ取っての直接攻撃となれば政府や軍隊からすれば盲点を突かれるも同然ですから。
しかもこの作戦自体は第一段階に過ぎず、ナジはもう一つ恐ろしい第二段階を用意していました。
化学兵器の都市拡散
ワシントンへの直接攻撃に続き、第二段階は化学兵器をワシントン全体へ拡散することでした。
この化学兵器の都市拡散は偶然にも近い時期に日本で起こった地下鉄サリン事件を彷彿させます。
確かに一瞬で化学兵器を都市にばらまかれれば、人口も密集している分犠牲もあっという間に出るでしょう。
地下鉄サリン事件の時も突発的に起こったが故にまるで対処のしようがありませんでした。
こういった未曾有の危機を一瞬にして作り上げる先鋭化されたテロリズムが本作の怖い所です。
日常の影から忍び寄る悪
本作の一番恐ろしい所はこうしたテロリズムがごく普通の日常空間から簡単に生じてしまうことです。
ナジ達が行っているテロリズムは下調べも作戦も入念に行っていますが、出現自体は突然の出来事でした。
冷戦が終結してから90年代以降は「巨大な悪の不在」が叫ばれており、一見平和になったかのようです。