そして絶対に自分たちエイズ患者は負けてはいけないのだという思いに駆られたに違いありません。
そのためにエイズ患者をどうにかサポートできないかと模索したのではないでしょうか。
ロンの最期
ロンの活動はエイズ患者や彼らを支える人たちから大いに感謝されました。そんな彼は一体どのような最期を迎えたのでしょうか。
充実した人生
初めてエイズの診断を受けた時は余命30日を宣告されたロンですが、それを大幅にオーバーし、7年後息を引き取りました。
残り30日しかないと思って目一杯生きたでしょう。そして30日を過ぎた日からは、生きていること自体がラッキーなのだと思ったはずです。
毎日「今日が最後だ」と思うことで、人生は豊かになるという考えがあります。まさにロンもそのように考えていたのではないでしょうか。
だからこそエイズ患者のために精力的に活動した彼の最期は充実感に満たされていたと推測できます。
自分らしく
最後の裁判が終わったロイは、再びロデオにまたがったようです。
健康な人間であれば何の不思議もない行動ですが、一時は余命30日を宣言された人間がロデオにまたがるのは驚くべきことではないでしょうか。
彼は「エイズ患者はエイズ患者らしく振る舞わなければいけないのか」という疑問を私たちに投げかけているように見えます。
自分は自分だというスタンスを最期まで貫いたのでしょう。
悲しさとは無縁
エイズになる前と後では、ロンの人間関係の幅は倍どころではなく広がったはずです。
仮にエイズにかからない人生を送っていたら、ロンの場合は女好き過ぎて結婚もしなかったかもしれません。
であれば死ぬまで独り身で、最期を誰にも看取ってもらえなかった可能性もあります。
一方エイズとともに生きたロンの人生には、理解者・ロンに救われた人・別世界にいると思っていたゲイ仲間など多くの人が関わりました。
彼の最期は決して悲しいものではなく、多くの感謝に包まれていたのだと考えられます。
ロンが感謝された理由
薬を違法に持ち込み、売りさばいていたロンが、これほどまでに感謝された理由は何だったのでしょうか。
当たり前を覆した
エイズ患者たちは、まさか自分たちが金儲けの手段に使われていたとは1ミリも考えていなかったでしょう。
薬は病気を治すためだけに存在していると誰もが疑いません。だから医者に処方されるがまま薬を接種していたのです。
担当医ががAZTを投与しないと言ったら、それに従うのが普通だと思われます。
ですがロンは自分で他の医者を探し、薬の効能や副作用を調べました。
当たり前を覆す彼の行動が多くの患者を救い、感謝されたことはいうまでもありません。
度重なる裁判
ロンは何度もAZT利用の危険性や、エイズに効果的な薬が他にあることを裁判で訴えました。
彼は敗訴してばかりましたが、それでもなお自分の正当性を訴え続けたため、彼の声が多くの人に届いたのです。
もしもロンが負けることを恐れて訴えずにいたら、ただの違法行為として処理されていたでしょう。