出典元:https://www.amazon.co.jp/dp/B086WHWL2R/?tag=cinema-notes-22

映画「mellow」は2020年公開の日本映画で、今泉力哉監督作品の中でも凄く個性溢れる作品です。

主演に田中圭と岡崎紗絵、更に脇にはともさかりえなどかなり落ち着いた雰囲気のキャストが揃っています。

あらすじはとてもシンプルである花屋を営む誠一という男性を中心とした様々な“好き”がテーマです。

日常の中にある普遍的な”好き”という、特別でも何でもない日常の事柄を淡々と綴っていきます。

その中で出てくる花束とラーメン、様々な想いが錯綜する中で徐々に起こっていく「ズレ」が見所です。
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本稿では誠一が花が恋人という程に花を愛する理由を中心に考察していきましょう。

また、本作に出てくるラーメンと花の関連性、そして花束を通じた誠一と木帆の関係を深く掘り下げます。

“小津”を感じさせる物語

小津安二郎大全

本作は”好き”という言葉・感情を巡ってのお話ですが、その作風はどこか“小津”を感じさせるのです。

登場人物に近すぎず遠すぎずのローアングルでのショットや淡々と進む中にも確実に変化していく関係性。

一見他愛ない日常の一部を切り取ったようでいて、それが実は時間と共に鮮やかに変化を示しています。

温かい中にも哀愁や無常観などただの恋愛映画に留まらない人々の思いは我々の潜在意識を刺激するのです。

そうしたどこか昔懐かしいながらも今日の出来事に映る感覚は正に小津安二郎映画に通底するものがあります。

そうした基本構造を押さえた上で本作を見ていきましょう。

誠一が花を愛する理由

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本作の主人公・誠一は花が恋人という程に花を愛していて、何故か独身を貫いているのです。

そこまでして彼が花を慈しみ愛する理由には何があるのでしょうか?

ネタバレも含みながら是非考察していきましょう。

“ロマン”の象徴

ろまん燈籠

まず一番にあるのが花自体が“ロマン”の象徴だからではないでしょうか。

本作は花を通して”好き”を具現化し伝えることが多いですが、それは花にそのような役割があるからです。

日本では妖艶な雰囲気のある人を「花がある」と、また相手に功績を譲ることを「花を持たせる」といいます。

そう、どこか少し神秘的で人を惹きつける美しさやロマンの象徴として「花」は存在するのです。

そういう特別な贈り物としての雰囲気が誠一が花を愛する理由の一つと考えられます。

人の想いを知ることが出来る

誠一は花を買う人に必ず相手の性格を含む情報を必ず聞いた上で花束を作ります。

ここからも分かるように誠一は恐らく花束を通してその人の想いを知ることが好きなのです。

花言葉が存在するように、人は相手に伝える想いで渡す花を選んだり決めたりしています。

花屋という仕事を通して人の思いに触れて擬似的な好きの気持ちを経験出来るのです。

特にそれは青木家で花を活けた時麻里子から告白されるシーンに現われています。

そう、花屋という仕事は職業柄こういった人々の思い、ロマンに触れることが出来るのです。

誠一の思いやり溢れた柔らかい人柄はこうした経験から磨かれているのでしょう。

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