信用できなければ、彼の子どもは欲しくないし、逆に信用できれば彼の子どもを産みたい。
そんな心の揺れの中で、失踪事件を起こしたのです。
ニックの本心を知りたいという思いから、彼を陥れて真実を引き出す計画を立てたと考えられます。
夫として受け入れた
取材陣の前で妻への愛を語ったニック。
それを見たエイミーは、彼がこれからの人生において完璧な夫を演じ続ける意思があることを感じ取ったのではないでしょうか。
それならば浮気はもうしないでしょうし、子どもを産んでも大丈夫だと確信したはずです。
エイミーはニックを愛しているがゆえに、彼に完璧な夫を演じて欲しかったのだと思われます。
そして安心して子どもを産み、一生彼と添い遂げようと考えていたのではないでしょうか。
「可愛さ余って憎さ百倍」という言葉があります。
エイミーは自分を愛してくれないニックを殺したいほど憎んでいましたが、それは彼を愛していたからこそだったのかもしれません。
絵本の中のエイミーはもういない
妻の失踪事件をメーンにした本作では、「ゴーン・ガール」より「ゴーン・ワイフ」というタイトルの方が適しているように見えます。
なぜワイフではなくガールという単語を使ったのでしょうか。
ガールは女の子という意味ですから、大人になっていない女性を指します。
ですがこの映画に女の子の失踪は描かれていません。失踪したのはエイミーという大人の女性です。
そう考えると、絵本の中の完璧なエイミーがいなくなったと解釈することも可能ではないでしょうか。
現在のエイミーはもう絵本の中の少女ではなく、大人として妻として自分の人生を歩んでいるのだと印象づけたかったのかもしれません。
であればエイミーは完璧な妻だとか完璧な夫だとかは関係なく、純粋に彼を愛しているだけだといえます。
彼女は他人が描いた人生ではなく、自分で描いた人生を生きているのだというメッセージが込められているのではないでしょうか。
まとめ
ギリアン・フリンの小説を原作とし、2014年に公開された映画「ゴーン・ガール」。
エイミーの凶行に翻弄されたニックは、周囲からの疑惑の目から逃げるために、妻への謝罪の言葉を口にしました。
彼は自分の意思よりも他人の評価を重視したことになります。
それは幼い頃からエイミーが実践してきたことであり、彼らは根本的に似たもの同士だといえるのではないでしょうか。
だからこそお互いに惹かれ合い、結婚したはずです。
一見すると仮面夫婦なのですが、彼らには確かに深い絆があり、お似合いのカップルなのです。
やり方は異常ですが、浮気した夫にお灸をすえ、再び夫婦としてやり直したエイミー。