出典元:https://www.amazon.co.jp/dp/B07DG4TZ4G/?tag=cinema-notes-22
本作はミュージカル”Into the Woods”を原作にロブ・マーシャル監督が映画化した作品です。
数々の童話をアニメ化してきたディズニー製作だけあってかなり力の籠もった作りになっています。
あらすじはパン屋の夫婦が魔女の呪いを解くために森の中へその為のアイテムを探しに行く構造です。
その中で赤ずきんをはじめとした様々な童話の人物達と出会い、不思議な話が展開されます。
本稿では4つの物語の共通点をネタバレ込みでじっくり掘り下げていきましょう。
また、魔女が死んだ理由や森が物語に与える影響なども併せて見ていきます。
スーパーグリム童話大戦
本作の構造はいってみればグリム童話作品のクロスオーバー、即ち「夢の共演」というものです。
オリジナルの主人公が森の中で出会う4つのグリム童話の主人公達と結束し困難を乗り越えていきます。
また全員共通の敵がいるので、「スーパーロボット大戦」シリーズが構造としては近いでしょう。
日本では古来よりこうしたスター同士の夢の共演はありましたが、本作はグリム童話でそれを実現した形です。
なのでグリム童話の原作再現やクロスオーバーによって違った展開を辿るなどの細かな違いも味わえます。
そんな本作はまさに「スーパーグリム童話大戦」という名が相応しいでしょう。
4つの物語の共通点
本作のベースになっているのは赤ずきん、ジャックと豆の木、シンデレラ、ラプンツェルの4つの物語です。
数あるグリム童話の中からこの4つに絞られたからにはきっと何かしらの共通点があるはずです。
原作再現とも照らし合わせながら4つの物語の共通点を見ていきましょう。
中世ヨーロッパ時代の現実のカリカチュア
まず歴史的背景を押さえておくと、グリム童話とは元々中世ヨーロッパ時代の現実のカリカチュアです。
グリム兄弟がその現実を独自の視点から寓話として作り上げており、初版は凄く残酷な作風でした。
その初版が非難囂々であった為に書き換えを迫られ、現代ではかなり軟化した物語として読まれています。
それは本作も例外ではなく、命が軽く扱われていた中世の時代性が背骨にあるわけです。
この歴史的背景を押さえていくと、細かな共通点も見えてきます。
貧困層の成り上がり
そうした時代性の上での共通点は主人公4人がいずれも貧困層から成り上がった人達であるということです。
継母に虐められていたシンデレラ、祖母ごと狼に食べられる赤ずきん、貧しい農家育ちのジャックと見事に貧民ばかり。
高い塔に閉じ込められたラプンツェルも元々は魔女の家の畑のレタスが欲しくて手を出したことが始まりでした。
いずれもが貧困に苦しむ生活をする中一攫千金で幸せを掴むという物語の構成になっているのです。
だからこそ4人とも森の中に自分達が欲しいアイテムを手にしようとやって来ます。
障害となる敵がいる
更に共通しているのは幸せを掴もうとする過程で必ず彼らには障害となる敵が出てくるということです。
例えばシンデレラなら継母、赤ずきんは狼、ジャックの場合は巨人の男、そしてラプンツェルが魔女でした。
これらは恐らく中世ヨーロッパ時代の悪である「貧困を生み出す元凶」を擬人化したものではないでしょうか。