英会話学校で先生は「この学校で好きなものは何?」とわざと愛の質問をしました。
果たしてこの質問にはどのような真意が隠されているのでしょうか?
カミングアウトの大切さ
まず忘れてはならないのは英会話学校の先生がゲイであるとカミングアウトしていることです。
特殊な性癖故にいうのは勇気がいりますが、本音を割って話せると楽になります。
彼は敢えて他の生徒たちもいるところでこの質問をして本音を引き出そうとしたのでしょう。
人種の壁や言語の壁など思いは様々あれど好きという気持ちは万国共通のものです。
質問の意図を理解しているか否かを試す
そしてもう一つ、学校の先生が見ていたのは「質問の意図を理解しているか否か?」ではないでしょうか。
恐らく生徒が答える内容そのものはあまり意味がないし、ローランがシャシを好きなのも理解していました。
実際「好きなもの」だから別に好きな人のことを答える必要はなく、リアクションを見ていたのでしょう。
そこで変に緊張したり受け狙いの回答をしたりするよりも飾らない回答を聞きたかったのです。
だからこそローランの本音を知ったシャシは一度気絶して逃げるという出来事が起こりました。
こういうハプニングもまた先生は承知の上で楽しんでいたと推測されます。
まだまだ実現しないジェンダーフリー
本作ではシャシの家族が中心となっていますが、これはジェンダーフリーが社会に浸透しきっていない証でもあります。
昔に比べると男女雇用機会均等法などにより女性の社会進出は増えましたが、男尊女卑はまだまだなくなりません。
その差別が一番卑近なところで向けられるのが主婦であり、シャシはそうした壁と一番戦っていたのです。
夫のダメ男ぶりはやや誇張しすぎですが、一方で世の夫は無意識にこういう差別意識や優越感を抱えています。
本当の意味でのジェンダーフリーが浸透した社会が実現する日はきっとまだまだ遠いでしょう。
揺るぎない自己を持つこと
本作を見ていくと、シャシは英会話学校での生活を通して最終的には家族や主婦の壁すらも打ち壊しました。
それは性別や立場に関係なくどれだけ揺るぎない自己を持っているか?にかかっているのです。
だからこそシャシはやや揺ら迷い傷付きながらもそれら全てを乗り越えて真の強さを手にしました。
同時にこれは女性だけではなく男性も同様に本当の強さとは力でもスキルでもなく精神面でしょう。
シャシの努力の日々は静かながらも確かに世の主婦をはじめ多くの人達の共感を呼び一石を投じました。
誰もがシャシのようになれるわけではないですが、シャシのような心の強さは誰もが獲得できます。
今この時代にこそ正にシャシのような強さをもった人が求められているのかもしれません。