人間社会は悪から善で秩序を守る反面、見た目の美醜や性別、貧富の差、国籍、宗教などで差別をしてしまいます。
ティーナが税関でヴォーレから感じた匂いの意味は、差別に対する「怒り」だと思ったのでしょう。
しかし、ティーナもまたトロールであると知った時は、同じ種族の匂いだったと腑に落ち徐々にヴォーレに惹かれていくのです。
ヴォーレの正体
ヴォーレはトロールである両親が研究のための実験台にされ死亡し、自分は施設を転々として育ったことで人間に対する恨みの念がありました。
そして、トロールの生体なのか?ヴォーレは男の姿をしながら男性器を持たず、未受精卵児を定期的に産み落としていたのです。
ヴォーレには人間に対する復讐心があり、その正体は「子供をさらい」人間の子と産んだ未受精卵児をすり替え人身売買をする犯罪者でした。
ティーナが吠えた理由
容姿のことで孤独だったティーナでも、優しい両親や隣人との生活から人間社会で順応できた彼女には人間としての「正義心」が育っていました。
ティーナがトロールという同じ種でありながらヴォーレに吠えた理由はこれです。
「我々は虐げられてきた…我々を苦しめた人間に復讐を…同じ目に合わせてやる」
「どうかしてる…イカれてるわ」
「人間ならイカれてるが、幸い僕はそうじゃない」
引用:ボーダー 二つの世界/配給会社:キノフィルムズ
生きづらさのある人間社会でも、嗅覚の能力で児童ポルノ犯罪を摘発したことや、事件を解決に導いた自負がティーナにはありました。
しかし、ヴォーレがその事件の首謀者であり口封じのために人間を殺し、生まれたばかりの隣人の赤子をさらったことはティーナへの裏切りです。
ティーナがヴォーレに吠えたのは、ティーナが人間として築いた信頼を踏みにじったことへの怒りと悲しみがわき上がったからです。
トロールとして生きる
トロールへの目覚め
ヴォーレはティーナの元から逃走し一緒に旅に出るようフェリーに誘いだしました。
しかし、人間として長く生きてきたティーナは、ヴォーレを拘束させるために警察を連れてフェリーへと向かったのです。
「残酷になることに意味を見いだせない」
「人間でありたいのか?」
「誰も傷つけたくない…そう思うのは人間みたい?」
引用:ボーダー 二つの世界/配給会社:キノフィルムズ
ヴォーレは漆黒の海へ飛び込んでしま、その後のティーナは税関職員を辞め、一人になってしまった森の中にひきこもったのでした。
父の告白
実際に1970年代までのスエーデンには精神病院の病床数が世界でも最も多く、精神疾患への理解と治療に関しては世界基準から遅れていました。