十字架のお守りは神秘の力を与える効果があるともいえ、それがオーディション優勝の予祝になっていたのでしょう。
ヴァイオレットの父に関してその詳細は描かれていませんが、間接的にでも娘をしっかり見守り支えていたのです。
また、それを持たせた母もまた奥底ではきちんと娘思いのいい母であることが窺えます。
こうした家族の理解と支えもまた少なからず彼女のオーディション優勝に貢献しているはずです。
運も実力のうち
そしてこれは完全な予想外でしたが、最終オーディションの優勝者が偽名を使って反則して失格になったことです。
いってしまえば繰り上げ合格でこれだけだとご都合主義ですが、しかし一方では運も実力のうちともいえます。
音楽に限らずその分野においても決して才能や実力だけでは勝てず、やはりそこは時の運が影響するのです。
よく「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」といいますが、まさにそれを表現したのでしょう。
ヴァイオレットの繰り上がりは不思議な要素が働いていますが、偽名を使った優勝者は負けるべくして負けました。
というか、そもそもヴラドと出会い才能を発掘して貰えた時点でヴァイオレットは運が強い人なのかもしれません。
契約しなかった理由
ヴァイオレットは決勝大会前日、何とジュールからレコード契約の誘いを受けました。
しかし、彼女は何故かそれを断って決勝大会へと進んでいくのです。
決して美味しくない話ではないのに何故断ったのか、彼女の心情を見ていきましょう。
ヴラドとの絆が切れる
優勝の理由とも重なりますが、ジュールと契約を結ぶことはヴラドとの絆が切れることを意味します。
ヴァイオレットが歌手を目指すのは単なる売れたいという欲があってのことではありません。
何よりもヴラドと共に歩んできた日々があってこそ彼女は音楽の世界を志したのです。
幾ら才能や実力があって美味しい環境があっても、仕事は「誰と組むか?」が最も大事になります。
ヴラドが元歌手であるというだけではなく、彼の人間性に惚れ込んでいるのです。
それがないとビジネスパートナー、ましてやマネージャーという仕事は務まりません。
事務所への依存になる
ヴァイオレットが断った第二の理由はこの契約が自分の望んだものではないからではないでしょうか。
オーディションはヴラドのスカウトがあったとはいえ彼女自身の努力と支えで勝ち取ってきたものです。
しっかり地に足をつけて身につけてきたものを見知らぬ事務所が掻っ攫ってしまうことになります。
それは同時にヴァイオレット自身美味しい話に流されて依存してしまう危険性も孕んでいるのです。
また、そうした望まぬ契約によって将来を渇望されていたタレントが潰れていく例はどの分野でもあります。
そうしたものに頼るのではなく地道に積み上げてきたもので勝負し勝ちたかったのではないでしょうか。
自身の甘さをたたき直す
そして一番痛烈だったのは決勝大会前日に契約先のケイヤンという男性と迂闊に酒を飲んでしまったことです。
これはプロ意識が欠如している行為に他ならず、下手すればスキャンダルとなって彼女の経歴に汚点がつきます。
そのことをヴラドに指摘され、口論になったものの彼女は自身の意識の甘さを実感したのではないでしょうか。