つまりケイヤンに流されることは甘えとなってしまい、事務所の力によるごり押しと見られかねません。
プロならば他者の力ではなく本物の実力で勝負するべきであるという認識がここで身についたと推測されます。
ヴラドの決断の真意
本作の柱となっていたのはヴァイオレットとヴラドの絆でしたが、きっかけはヴラドの決断でした。
彼は彼女の歌声に惚れ込みスカウトしますが、条件付きで決意した真意は何でしょうか?
投資
現実的な話でいうなら、これは単なる将来性への期待ではなくヴァイオレットへの“投資”です。
それが一番分かりやすいのが将来有名になったらマネージャーとしてギャラ50%という条件をつけています。
これだけを見ると金にがめつい男に見えかねませんが、そうではなく相応の対価が必要だということです。
ギャラを50%と高くする分本気で超一流の歌手としてものにし、豊かにする覚悟が見えます。
そういう意味ではヴラドは只の元オペラ歌手だけではなく、コンサルに長けたメンターでもあるようです。
これは今の時代まさに必要とされている投資系ビジネスの一つの形ではないでしょうか。
夢を託す
もう一つは自身がヴラドが音楽の夢を託せると思えたのがヴァイオレットだったのでしょう。
ヴラドがヴァイオレットへ投資をする理由は同時に彼が夢を次世代へ託したからです。
これは同時に一つの世代交代・継承を意味する通過儀礼でもあり、時代の移り変わりを意味します。
投資系ビジネスというとまるで夢がないようですが、実は逆で一流のビジネスパーソン程夢見がちです。
単なる歌の上手さだけではなく、歌を通じて大切なメッセージを発することが出来るのではないか。
そういうイメージが持てたからこそヴラドはあれ程の決断をしてみせたのです。
才能×情熱×環境
こうして見ていくと、本作が単なる王道系のサクセスストーリーに終始していないことが見えるでしょう。
ヴァイオレットヴラドと出会うことで変われましたが、単に努力をしたから変われたのではありません。
よく世の中「努力は実る」という言葉がありますが、これは正確には条件付きでの分解が必要です。
まずその人に与えられた才能の有無、二つ目に自ら情熱をもってその仕事を仕事と思わずやれるか否か。
この二つが前提にあり、その上で後は人材や場所といった夢の実現を可能にさせてくれる環境です。
ヴァイオレットはこれら三つが適切に揃っていたからこそスター街道を歩むことが可能となりました。
新しいビジネスの形
こうして見ていくと、世の中必ずしも自分の好きだけを形にして仕事に出来るわけではありません。
また、どんな得意分野があったとしても、それを仕事にする環境と仲間に恵まれなければ一緒です。
その上で惚れ込んだ師へしっかりついていくことが最短で夢を実現できる方法ではないでしょうか。
ヴァイオレットとヴラドの関係や物語の描写は実は現代の新しいビジネスの形を示しています。
そして何よりこれが演じているエル・ファニング自身のサクセスストーリーにもなっているのです。